2016年度は研究期間の最終年度ではあったが、以下のような事情から、現時点で新たな研究成果の公表には至っていない。近時、自動者の所有権留保売買につき、販売会社から目的物の所有権を譲り受けた信販会社が、買主について倒産手続が開始された時に、登録名義を販売会社に残したまま,別除権を主張して目的物を取り戻そうとする紛争が下級審裁判例において見られるようになり(例、札幌地判平成28年5月30日金法2053号86頁及び札幌高判平成28年11月22日金法2056号62頁)、2016年度後半には少なからずの論稿が公表されるに至っている(例、田高寛貴「倒産手続における三者間所有権留保」金法2053号29頁ほか)。この論点は、最判平成22年6月4日(民集64巻4号1107頁)の射程にも関連するものであり、同時に、所有権留保売買に基づいて買主にいかなる権利が与えられるのかという点で、本研究で取り扱うべき検討課題といえる。 しかし、具体的な論点として浮上したのが研究期間最終年度の最後の半年という時期でもあり、議論全体を俯瞰しながら新たな研究業績へと昇華することができなかった。また、研究以外の要因として、法科大学院の教務の責任者としての業務が非常に重い負担となっており、2017年度に迎える第三者認証評価の準備作業とカリキュラムの改革に伴う諸作業に忙殺されてしまった。そのため、科研費の研究課題に振り向けられる時間が減少し、研究成果の公表には至らなかった。この点は、特に反省すべき点であるといわざるを得ない。 今後は、大学の業務と研究とのバランスに留意しながら、新たに生じた論点を中心として研究を継続して関連する新規の研究へとつなげていきたい。
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