平成28年度は、研究の最終年度であり、前年度中に行った研究会等での議論の結果を踏まえて、残された問題についての検討を行い、まとめの作業を行った。具体的には、ドイツ法を中心に、EU全体およびそのメンバー国の企業再建法制について文献調査を実施したほか、ドイツ現地での調査として、論点を限定した実務家とのインタビューや、資料収集等を行い、ドイツのみならず、ヨーロッパ全体における「支払不能前の企業再建手続」の流れの現状および今後の方向について、研究を行った。 そのような研究活動の中で、本研究課題のテーマである「私的整理と法的整理の「統合」」の在り方については、特定の国に限定せず、EU全体での柔軟かつ簡易な再建手続を作ろうとする動き(とくに2016年11月の欧州委員会によるEU指令の提案)に注目する必要があるという視点を得るに至り、EUおよびそのメンバー国の再建手続の最近の展開についても本格的な検討対象とすることとした。 また、わが国の動向との関係では、2015年3月に発表された「事業再生に関する紛争解決手続の更なる円滑化に関する検討会報告書」の提案が具体的な立法課題とされている状況にかんがみ、上記の比較法の成果を踏まえつつ、「検討会報告書」の提案について批判的に考察する論文を準備した。その成果は、「再建型私的整理手続と法的整理手続の「統合」試論」」として、近く上智大学法学論集60巻3・4号において発表予定である(原稿提出済み)。
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