従来から日本は死亡保障型の生命保険が主に利用されているが、諸外国では年金型や貯蓄型の利用が多い状況である。よって、イギリスとかアメリカでは生命保険の買取制度、生命保険の担保的利用など、生命保険の財産的側面に起因する様々な制度が設けられ、検討・議論も多く行われている。しかし、死亡保障機能を重視する日本においては貯蓄機能についての検討・対応は不十分であるため、生命保険の有効な活用策を法的観点で検討した。 生命保険契約が保証する様々なリスクの全てに対応できる条件づき請求権は金融市場に存在しないが、他の経済モデルと組み合わせることによって生命保険契約の合理的な価額を算定できると思われるので、生命保険契約に内在する様々なリスクに対する経済価値の換算もある程度できるようになったことが分かった。生命保険契約の財産性を権利の側面で活用できる手段としては保険証券化が考えられるが、その詳細な手段については保険学と経済学の観点で検討する必要もあるため、本研究の対象としなかった。また、アメリカの生命保険協会が2010年2月に買取事業の証券化について反対する立場を明らかにしており、その主な理由は保険買取業者が証券化によるアンダーライティングと被保険利益の確認する努力の低下、投資家に対する透明性の欠如、証券化によっては被保険者にも投資者にもリスクが生じる恐れがあると指摘している。それに対するアメリカ生命保険投資団体の反論についても検討した。 財産的側面での活用に欠かせられない問題として、保険契約者と保険院受取人の変更をめぐる法的問題があり、保険者が相当の理由もなくその変更を拒むことに対して対策の一つとして制裁の必要を提案する。生命保険に対するニーズの変化に応じられる保険制度の対応と法的措置は常に求められているため、今後も引き続き金融市場の動きと市場ニーズの変動に注目しながら研究を続けていく予定である。
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