研究課題/領域番号 |
26380134
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
松井 秀征 立教大学, 法学部, 教授 (30282536)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 海商法 / 船舶排出物 / 船骸撤去 / 国際運送 / 航空運送 / 除斥期間 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、当初の研究計画に示した通り、物流分野の取引、とりわけ運送取引等を中心として、当該取引をめぐる諸問題に関する比較法的研究、およびわが国における具体的な法規定の解釈をめぐる研究を行った。 第1に、比較法的な観点からの研究としては、外国における実務に関する情報を収集し、これをわが国に紹介することを試みた。特に、現在の海商法の分野において問題となっている論点に関して、文献収集のみならず、国際的な学会等への参加の方法によって情報収集を行った。具体的な成果として、船主団体等において喫緊の課題となっている船舶排出物をめぐる問題、および近年国際条約として発効した船骸撤去をめぐる問題に関する論文を公表した。これらの成果は、海商法の分野における最先端の課題をわが国に紹介するものである。 第2に、わが国における具体的な法規定をめぐる研究として、国際航空運送に関するモントリオール条約の規定を手掛かりとした研究、とりわけ当該条約の定める運送人の責任消滅期間に関する研究を行った。この研究は、基本的にわが国における文献収集のほか、学外の研究会等に参加して他の研究者との意見交換を通じて行われた。具体的にはわが国における近時の下級審裁判例を手掛かりとして、先の責任消滅期間の規定について、これを除斥期間と解釈するか、あるいはそのほかの解釈の可能性があるかについて論文を公表した。この点は従前のわが国に十分な研究の蓄積がなかったことから、アメリカ、ドイツ、フランスの当該規定に関する態度等を調査し、前記下級審裁判例の提示した解釈の問題点を指摘している。これは、従前わが国において未検討の問題について検討を加えた研究である。 そのほか、現在進行中の運送法・海商法改正に関して、シンポジウム報告及び外国向けの紹介論文の執筆も行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度においては、運送取引または倉庫寄託取引を対象として、ヨーロッパ(ドイツやフランス)の制度を参照しながら、日本法の具体的な規定に関する立法論、あるいは解釈論的な議論を展開することを想定していた。 今回、わが国において具体的な法規定を有していない分野について、国際的な動向をわが国に紹介することができたほか(これは今後の立法論の上で有益な議論である)、モントリオール条約の具体的な規定(運送人の責任消滅期間の規定)について、比較法的な見地も踏まえて、一定の解釈論を提示することができた。これは、当初想定した計画におおむね合致するものといえ、当該年度については当初の予定通りに研究が進展したと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては、平成26年度の研究を引き継いで、倉庫寄託取引等について、やはり比較法的な見地を踏まえながら、わが国の具体的な規定に関する、立法論、あるいは解釈論を行うことを考えている。 具体的には商法に定めのある倉庫営業の規定、あるいは場屋営業者に対する寄託の規定等を手掛かりとして、以上の研究を進めていくこととしたい。
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