研究課題/領域番号 |
26380137
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
青木 則幸 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (30350416)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 後順位担保権 / ABL / UCC第9編 / 実行 / 集合動産譲渡担保 / 流動債権譲渡担保 / 非占有担保 / 占有担保 |
研究実績の概要 |
本年度は、主としてアメリカにおける取引類型論の観点から、事業者の在庫商品や売掛債権を包括的に捕捉するタイプの後順位譲渡担保の実行権限に求められる制度設計の検討を行った。 アメリカの動産債権担保法であるUCC第9編によると、理論的には、同一目的物(包括担保)上の同一種類の後順位担保の存在は否定されておらず、後順位担保の実行権限も否定されていない。その解釈に関する議論も存在するが、比較的低調である。 取引類型論からみると、包括担保をわが国の集合動産や流動債権上の譲渡担保に類比されるような非占有担保として利用する取引においては、最先順位、後順位を問わず、担保権者が(倒産手続によらず)実行手続を利用して債権回収を図る例が少ない。それゆえ、そのような紛争事案について判例の蓄積が低調であることが、上記のような理論的停滞の理由であるようにもみえる。 しかし、先行する包括担保権者がいる場合に、その目的物について、後発に、別の種類の担保をとる後発担保権者の取引行動に注目すると、同一目的財産上の後発担保権の実行は盛んに行われている取引実態が存在し、UCC第9編もそのような取引類型を想定しつつ、目的財産の種類を限った優先関係の調整規定により、そのような実行を許容しているというべきである。具体的には、先発取引が包括担保を利用する非占有担保(わが国の集合財産譲渡担保に類比される取引)であるのに対し、後発が債権に注目した占有担保としての実態をもつ場合である。なお、後者がアメリカでABLと呼ばれる取引である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね、研究計画のとおりに研究を遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
当研究の最終年度にあたる2016年度は、理論研究として、同一の種類の後順位担保権の実行に関する判例の蓄積が厚い不動産モーゲージの理論との比較検討を行うと同時に、取引類型論の観点からは同一目的物上の異種の担保権者の関係を探求する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月にアメリカの研究者に対するインタビューを伴う研究出張を予定したが、主要なインタビュー相手の予定の変更により、年度内に旅程を最調整することが困難となったために、旅費相当分を次年度使用額にまわした。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画どおり、アメリカの研究者に対するインタビューを伴う研究出張を行う。8月下旬ないし9月上旬を第一候補として再調整を試みており、再々調整の余地を残すことで、次年度内に使用の予定である。
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