譲渡担保は、事業の流動資産を目的物とするABLなどで幅広く用いられる法形式であるが、後順位譲渡担保の利用可能性には疑問の余地が大きい。判例(最判平成18年7月20日民集60巻6号2499頁)によって、後順位譲渡担保の設定の余地は認められているものの、私的実行権限がないとされているからである。米法でも、類比される後順位担保権が利用されており、実行権限の制限もない。実行によってより後順位の担保権のみを消滅させ先順位担保権を引き受ける制度を背景とするためである。わが国の問題は、順位を問わず同一の実行権限を前提にするがゆえに、強い後順位の弊害からオールオアナッシングの制度選択がなされていることにある。
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