商標権の保護対象に関する研究の前提として、「大量デジタル情報の利活用におけるフェアユース規定の役割の拡大―著作権法(個別制限規定)の没落と自生的規範の勃興―」『コンテンツと著作権法の役割―しなやかな著作権制度に向けて―』(信山社・2017年)において、著作権の制限規定の役割の拡大を、著作権侵害主体との関係で分析し、公表した。 また、知的財産権(特許権)侵害の損害賠償について、主としてドイツ法・EU法を素材とし日本法と比較した論考を脱稿した(工業所有権法学会年報)。その中で、特許権侵害と商標権侵害の損害を比較し分析した。特に、特許権のグループ(特許権の信託やライセンスによる団体など)など、権利者が多数の場合において、独占的通常実施権をおこなった特許権者および特許権のライセンシーが、逸失利益ではなく、市場機会の損害概念のもとで侵害者利益やライセンス料相当額の請求をなしうるかを検討した。その中で、ライセンシーがサブライセンスする利益が、特許製品の品質・価格なのか特許製品のブランド保護なのか、という視点から、特許権の保護対象と商標権の保護対象を比較して分析した。また、逸失利益において損害が生じないと証明された部分について、さらにライセンス料相当額の損害賠償を併用して請求できるかという問題において、名誉声望やブランドの利益については、特許権の保護対象と異なるため、個別の損害項目を積み重ねて主張できると考えた。その場面においって商標権の保護対象と特許権の保護対象を比較分析した。
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