リベラルアーツ法学教育は、よりよき市民社会のための法学という意味を有する。この点に関する原理的な市民社会論を研究期間の前半でまとめた(2015年度)。方法論に関しては国際会議で問題提起的な報告をおこない参加者との討論を通じて多くの示唆を得ることができた(2015年度)。 リベラルアーツ法学教育の一部をなすトランス・サイエンス論の実践で取り上げたイタリア震災リスク裁判論を、共著の授業報告論文を一本のほか、テーマじたいに関する専門的考察の成果を論文の形でまとめた(いずれも2015年度)。その後もこのテーマを継続的に発展させ、研究成果の一部を口頭報告した(2016年度)。 研究期間後半では社会福祉と法が交わる分野での研究を進め、福祉レジーム論に関連するいくつかの成果を発表した(2016年度論文1件、2017年度論文1件、国際会議報告1件、国内学会報告1件、その他福祉に関する共著数点)。また海外の市民向け法教育、紛争解決技術のトレーニングの場にも参加し、本研究課題にとって高度な示唆を得ることができた。 最終年度においては、とくにリベラルアーツ法学教育実践のなかでも学生に法や政治の根本問題を深く考えさせるのに恰好の素材であるため、何重にも試行錯誤を繰り返してきた刑事政策分野における更生保護ないし「犯罪と福祉」の関係をめぐる検討結果の集大成となる論考をまとめ、またイタリアにおける刑務所改革に関する講演を翻訳という形で紹介した(いずれも2017年度)。 以上のような研究活動を総括すれば、よりよき市民社会のための法学であるリベラルアーツ法学教育の方法論を格段に鋭く研ぎすますことができたといえる。
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