研究課題/領域番号 |
26380147
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
小澤 久仁男 香川大学, 法学部, 准教授 (30584312)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境法上の団体訴訟 / 原告適格 / 環境・権利救済法 / 環境親和性審査の主観化 |
研究実績の概要 |
本研究の2年目にあたる平成27年度は、前年度までの研究を踏まえドイツにおける手続法上の団体訴訟の位置付けについての研究を行い、これに関する論文を公表した。そこでは、具体的に環境・権利救済法(Umwelt- Rechtsbehelfsgesetz)において手続法上の団体訴訟が導入されたことによって、近年、ドイツにおいては環境親和性審査(環境アセスメント)の主観化(subjektiviert)がなされたかどうかの可否の議論が行われており、この議論を取り上げた。この研究を通じて、①主観化が果たされているのであれば主観化とはその時々の法制度や判例の展開を受けつつ、まさに時代と共に変化する可能性もありうることを示し、②このような環境親和性審査の主観化の可否の議論はその是非が争われているものの、従来までの体系との繋がりを意識したものと理解できることを示した。 これらの作業に加え、ドイツ連邦行政裁判所は、2013年9月5日判決によって環境保護団体による大気汚染対策計画の訴訟提起を認めるなど、ドイツにおける団体訴訟論は更なる進化を見せているように思われる。そのため、最終年度にあたる平成28年度においては、同判決について研究を進めるべく、その関連文献の精読に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要のところでも示した通り、環境親和性の主観化が議論されるなど、ドイツ環境法上の団体訴訟制度の導入後も引き続き団体訴訟論が展開されてきた。さらには、近年、環境団体による大気汚染対策計画の原告適格が肯定される判決が出ているなど、更なる進捗を見せている。特に、同判決は、今後のドイツの展開を考察していく上で、重要な判決になると考えら、加えて、そのことがわが国における環境法上の団体訴訟の議論にとっても大きいものと言えるため、ほぼ予定通りに研究を遂行できたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、研究の最終年度であることから、これまでの研究を踏まえつつ、ドイツ連邦行政裁判所の2013年9月5日判決以後のドイツの展開に焦点を当てる。同判決は、連邦自然保護法や環境・権利救済法といった既存の法律で団体訴訟制度が導入されていないにもかかわらず、団体の原告適格を肯定している点が注目に値する。そして、同判決については、オーフス条約9条3項の司法アクセス権が深く関連していることから、同条約の存在意義を明らかにしつつ、その後のドイツにおける学説などを整理することによって、団体訴訟制度の意義・位置付けなどをより明らかにでき、わが国おける議論に寄与していきたいと考えている。また、本年度の研究については、論文などで公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
いくつかの文献が絶版となっていたことに加え、当初の見込みよりも安い金額で購入することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
資料収集やその他文献の購入などに充てていきたいと考えている。
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