高度な医療技術が社会に提供されるに伴い、開発段階では認識されていなかった副作用や社会問題が発生し、裁判所がその解決を図る場として利用されることがある。訴訟提起が政策決定や社会の問題認識に先行し、その後の社会の判断に影響を与えることもある。そこで章は行政や立法の政策判断や裁量にどこまで踏み込むかのバランスが問題となる。とくに医療技術には生殖補助医療や終末期医療など、日本の死生観や家族観といった重要な価値観につながる問題もある。本研究において医薬品や医療などの安全問題において司法が積極的に責任を問う役割を果たし、一方で倫理的課題には消極的な態度が見られた。
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