本研究は、ヨーロッパにおける消費者法分野の集団的被害救済制度および違法収益の吐き出し制度を研究することを全体的構想とする。本研究は、違法収益の吐き出し制度における行政と司法の役割、集団的消費者被害の救済に行政機関が介入することの妥当性、根拠、範囲等、集団的消費者被害救済における行政と司法の役割を明らかにすることを目的とする。 ドイツ競争制限禁止法の分野では、近時、カルテル庁が、被害者への利益の返還を事業者に対して命じる権限が、同庁の運用を踏まえ、2013 年6 月30 日施行の同法改正により明文化されている(同法32 条2a 項)。これについて、宗田貴行「搾取的濫用行為と独禁法上の行政及び民事的エンフォースメント―ドイツ競争制限禁止法における議論を参考にして―(上)(下)」(獨協法学96号2015年195-309頁、同97号2015年1-73頁)として公表し、本研究において、特に、大きな成果が得られたといえよう。これにつき、2016年12月10日、東京経済法研究会にて報告「搾取的濫用行為と独禁法上の行政規制・民事的救済―電気料金等の不当な値上げと独禁法上の救済手段について―」を行った。ここでの検討を踏まえて、特定商取引法上の消費者庁の指示に基づく返金命令の可否及びその要件について論じた「特商法上の指示に基づく返金命令」(獨協法学100号2016年151頁-180頁)を公表することができた。 また、消費者の集団的被害救済に関して、宗田貴行「New Developments of Collective Legal Protection System in Germany and Japan」、インゴ・ゼンガー著(宗田貴行訳)「集団的権利救済」鹿野菜穂子・中田邦博編『消費者法の現代化と集団的権利保護』(日本評論社2016年、527-549頁、433-457頁)を公表させて頂いた。
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