研究課題/領域番号 |
26380150
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
今村 哲也 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 准教授 (70398931)
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研究分担者 |
安藤 和宏 東洋大学, 法学部, 准教授 (00548159)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 著作物 / コンテンツ / 大量デジタル化 / 孤児著作物 / アーカイヴ / 教育の情報化 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,初年度の文献資料の分析や海外調査により収集した研究成果を踏まえて,諸外国の法制度の状況について調査するとともに,我が国の制度との関係を配慮しながら検討し,立法論的な示唆を提供するとともに,(3) 著作物の種類や実務の慣行に配慮しながら,過去のコンテンツの利用円滑化方策として最適なモデルを提案し,あわせて課題解決に向けた立法論・解釈論を展開することが主たる作業と位置づけた。 以下の計画・方法により,研究を実施した。 a)資料収集・分析:初年度に収集した資料の分析の他,引き続き,追加的な資料収集とそれらの分析を行った。 (b)海外調査:海外調査では,研究分担者が,本研究に関連する課題も扱う2日間の国際コンファレンス(ロンドンで開催)に参加して,幅広く関連情報を収集した。また,海外の研究協力者が来日することがあったので,その機会を生かして,論点に関する意見交換を行った。 (c)中間報告:総合研究のうち,権利者不明著作物の問題と教育の情報化に伴う著作物の権利処理の円滑化と利用促進に関して,分担執筆の書籍論文のなかで公表を行った。また,研究成果を報告する機会として,学会において報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨今,デジタル化・ネットワーク化に伴って,世界各国の図書館等の公的機関により,過去のコンテンツ資産をデジタルアーカイヴ化する等の事業が進められている。しかし,作品の著作権者等から事前の許諾を得る作業には膨大なコストが必要であるため,文化事業 を推進する場合の障害となっている。本研究では過去のコンテンツ資産の利用推進に伴い生じる権利問題について,外国の制度状況も調査しながら,現行制度の改善や新たな提案を行うための総合的研究を行うことを目的としている。論点は多岐にわたるが,研究計画 書では,具体的な調査分析の項目として,過去のコンテンツ資産の利用について,(1)その権利関係をめぐる現状の整理,(2)諸外国の法制度の状況,(3)利用推進に向けた権利処理の円滑化方策について,関係者への聞取り等の実態調査や諸外国の制度状況を調査し,課題解決に向けた立法論・解釈論を展開することを掲げた。平成27年度は,主として初年度の文献資料の分析や海外調査により収集した研究成果を踏まえて,(2) 諸外国の法制度の状況について,我が国の制度との関係を配慮しながら検討し,立法論的な示唆を提供するとともに,(3) 著作物の種類や実務の慣行に配慮しながら,過去のコンテンツの利用円滑化方策として最適なモデルを提案し,あわせて課題解決に向けた立法論・解釈論を展開することを主たる作業と位置づけた。 結果としては,アーカイヴや孤児著作物に関する書籍(分担執筆)や論文の公表を通して,立法論的な示唆を提供することができた。また,総合的な研究として,教育の情報化に伴う著作物の利用円滑化についても検討を進めて,論文を公表するとともに,幾つかの対外的な研究会・セミナーで報告する機会も得た。 以上のことから,これまでの研究成果に鑑みても,自己評価としては学会報告や論文の公表および海外調査によって,おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,これまでの考証を踏まえて,最終的な成果をまとめた論文や報告書の作成が主たる作業となる。以下の計画・方法により,研究を実施する予定である。 (a)資料収集・分析:最終的な成果としての論文や報告において必要となる追加的な資料収集とそれらの分析を行う。特に,権利者や利用者に対するヒアリング調査を実施することにより,過去のコンテンツ資産の利用や保護について,どのような具体的ニーズが存在するのかを改めて調査することを考えている。この際,引き続き,海外の研究協力者からの支援を仰ぐ予定である。なお,資料収集を効率よく行うため,アルバイトを雇用することを予定する。 (b)海外調査:海外調査では,過年度の調査を通して共同研究を行った研究者との間で関連する課題についての意見交換を行う。また,欧米において本研究に関連する課題を扱う著作権関連のワークショップや会議に参加し,関連情報を収集する予定である。 (c)最終報告:最終のまとめとして,関連する最終報告書を論文の形式でまとめて,専門誌等に投稿する予定である。研究成果を報告する機会として,各種の研究会において,報告することを予定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学部執行部において入試担当となったため,日程の都合で,予定していた出張等が計画通りには進まなかったこと,また,平成27年度は,アルバイトを使用して資料を収集・整理する機会が予想よりも少なかったことが理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に比して,アルバイトを利用して資料を収集・整理する機会が増えると思われるので,次年度使用額についてはそれに当てることを予定する。また,イギリスでは2014年に拡大集中許諾スキームを導入し,わが国でも文化庁委託事業で報告書が作成されるなど急速に関心が高まっている。この点について,イギリスでは,新規則の制定にともなって,集中管理団体による拡大集中許諾スキームへの申請も出てくると言われているので,その点について重点的に調査するため,未使用額はその調査に充てることを予定している。また,平成27年度から今回の総合研究のなかで,教育の情報化と著作物の利用円滑化について研究対象を拡大した。教育関係の権利制限規定について,追加的に諸外国の調査し,日本の法規定の対外的観点からの広狭について,分析することを予定している。
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