昨今,デジタル化・ネットワーク化に伴って,世界各国の図書館等の公的機関により,過去のコンテンツ資産をデジタルアーカイヴ化する等の事業が進められている。しかし,作品の著作権者等から事前の許諾を得る作業には膨大なコストが必要であるため,文化事業を推進する場合の障害となっている。本研究では過去のコンテンツ資産の利用推進に伴い生じる権利問題について,外国の制度状況も調査しながら,現行制度の改善や新たな提案を行うための総合的研究を行うことを目的とした。 最終年度は,これまでの考証を踏まえて,最終的な成果をまとめて学会等の報告や論文の作成を主として行った。 (1)資料収集・分析:最終的な成果である論文等や報告において必要となる追加的な資料収集とそれらの分析を行った。 (2)海外調査:海外調査では,過年度の調査を通して共同研究を行った研究者との間で関連する課題についての意見交換を行った。とりわけ,英国の状況については,拡大集中許諾制度を導入したこともあり,有識者から最近の事情に関する情報を得た。 (3)最終報告:最終のまとめとして,論文の執筆や学会での報告を通して研究成果を公表した。具体的には,日本知財学会の学術研究発表会において「教育の過程における著作 物利用に適用可能な権利 制限規定に関する法解釈とその限界」と題する報告を行うなどした。 研究期間全体を通じて,過去のコンテンツ資産の利用について,(1)その権利関係をめぐる現状の整理,(2)諸外国の法制度の状況(イギリスを中心に),(3)利用推進に向けた権利処理の円滑化方策について,関係者への聞取り等の実態調査や諸外国の制度状況を調査し,課題解決に向けた法制度のあり方について議論を展開した。
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