研究課題/領域番号 |
26380156
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
村山 淳子 西南学院大学, 法学部, 教授 (90350420)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 医療契約 / 診療契約 / 法典化 / 典型契約 / 典型契約化 / ドイツ民法 / 消費者契約法 / 労働契約法 |
研究実績の概要 |
1 本研究は、医師と患者の契約関係について、その実体的な内容の解明、(解釈論上の)典型的な医療契約類型の定立から「さらに」、その成文化(法典化)へと、理論的接合をはかることを目的とする。そのために、2013年に民法典の契約法に医療契約を組み込む立法が行われたドイツ法を主な素材として、比較法研究を行うものである。本年度は以下の作業を行った。 2 まず、昨年度実施の基本的・全体的研究(昨年度報告書参照)の成果を、日本医事法学会で個別報告した。報告論文を学会誌で公表予定である。また、この成果を含む著書(前年度報告書参照)に基づき、早稲田大学に学位請求し、博士(法学)の学位を取得した。以上と並行して、引き続き、ドイツの医療契約法についての情報資料のアップデイトと個別論点(特に医療水準や経済的情報提供義務)の深化に努めた。 3 また、国内の周辺法領域の立法に視野を拡げ、消費者契約法と労働契約法の立法の共通性をあきらかにする作業を行った。その結論は以下のとおりである。(1)外在的要因ないし背景事情として規制緩和や自由化の要求が存在したこと、(2)内在的要因として、弱者の人間像において自立へ向かう、あるいは向けられる動きがみとめられること、(3)市民法原理とともに、それぞれの法領域で発展した原理ないし手法を有していること、(4)市民法原理の発展形、あるいは市民法原理の部分的導入の装置として、契約法という法形式での立法が選択されたこと、(5)規制内容において、弱者の自己決定を実質化することと、契約内容そのものを規制することをともに含み、そのなかから当事者にインセンティブを与える規律を条文化していること、またはそうあるべきこと、(6)当該法領域における他法との協働、である。以上は紀要論文で公表予定である。2は研究の基本的部分の強化・公表・評価、3は2の補強と学術交流の点で重要な意義を持つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドイツの医療契約法に関する資料の収集、通読、執筆、発表に加えて、周辺法領域の立法例にも視点を転じて、研究の質・量ともに充実させることができた。 ドイツ法の新しい資料が予想よりも充実した内容でなかったことが「おおむね」と評価する理由である。
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今後の研究の推進方策 |
当初研究計画よりも視野を拡げ、消費者契約法と労働契約法についての研究を行った成果を活用したい。ドイツ法研究のわが国への適合的移植につき、全法体系の中での位置づけや、相対化という意味で、当初の研究計画よりも精度の高い研究を行う。 注目すべき個別的論点の解明にもいっそう力を入れる。 研究会長をつとめる日本賠償科学会とのバッティングにより比較法学会報告ができなくなった点に対しては、本年度の日本医事法学会報告での個別報告に加え、比較法学会の学会誌に最終結果を投稿することで対応したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を想定していた洋書が図書館で借りることで対応できる内容であったため、書籍購入費が思っていたよりはかからなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
まず、購入の必要性のある洋書が刊行された場合には最優先でその購入に充てる。次に、研究会等での成果公表の機会を増やし、そのための旅費に充てる。
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