1 本研究は、医師と患者の契約関係について、その実体的な内容の解明、(解釈論上の)典型的な医療契約類型の定立から「さらに」、その成文化(典型化)へと、理論的接合をはかることを目的とする。そのために、2013年に民法典の契約法に医療契約を組み込む立法が行われたドイツ法を主な素材として、比較法研究を行うものである。最終年度にあたる本年度は、特に以下2、3の作業を行った。 2 本課題と並行して行ってきた医療基本法に関する研究の最終考察を行い、本課題の考察と結びつける分析を行った。すなわち、ドイツの患者の権利法を、政策論とは区別された法的視点から分析した。本成果は、医療基本法研究の最終成果として、これまでの翻訳資料と合わせる形で、論文の形で公表を計画している。本研究は本課題の研究と並走し、本課題の研究の視野を拡げ、質を高めるために重要な意義を有する。 3 他方、とくに美容医療に関して、医療契約論および医療契約法の特徴的な展開を研究した。具体的には、医療水準から逸脱する合意の有効性、医師の経済的情報提供義務について研究した。本成果を自身が研究会長を務める日本賠償科学会第68回研究会で報告し、報告論文を学会誌で公表予定である。さらにそれを深化させた研究を、21世紀不法行為法研究会で発表し、書籍で公表予定である。本研究は、本課題の重要な個別的論点の深化と位置づけることができる。そして、次の研究課題の立案に繋がっていった。 4 補助事業期間全体を通じての研究成果として、最終的に、わが国における医療契約法の成文化(法典化)に関し、①社会的・経済的事情および患者の人間像、②保護目的・規制原理・介入根拠、③法の形、④条文選択基準、⑤全法体系ならびに周辺法領域の立法との整合性という視点から構想するに至った。今後、新民法典と関連づけながら、確定した医療契約法構想として学会誌等で公表することを計画している。
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