マイノリティの文化・コミュニティを尊重する「多文化主義」の政策には、複数の競合する理論が存在するが、それらを関係づける試みが不十分なため、理論、実践、政策論争において混乱が生じている。本研究は、主要な理論を「3つのアプローチ」として分類・整理したうえで、それらを相互補完的に組み合わせて、多文化主義の「複合的アプローチ」の構築をおこなった。作業は多文化主義理論の理論内在的な検討と、各国の政策実践・政策論争の分析を組み合わせておこなった。3つのアプローチの組み合わせにより、文化振興、差別の防止、コミュニティの活性化などの主要政策が体系的に基礎づけられることが明らかになった。
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