研究課題/領域番号 |
26380161
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
近藤 康史 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00323238)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イギリス政治 / 比較政治 / 政党 / 政党システム |
研究実績の概要 |
本年度は、(1)政党組織変化についての理論枠組の形成、(2)政党組織変化と政党システム変化との関連性についての検討、(3)とくにイギリス労働党の組織変化についての現状分析について、研究を進展させた。 (1)については、近年のイギリスの政党組織の変化を、イギリス全体で進行する分権化と関連づける形で理論化を行った。その際、連邦制研究との関係を意識し、政党組織もまた分権化することで、一定の変化が生じるという事態がイギリスでも起こっていると結論づけた。 (2)については、(1)で述べたような分権化の中で、選挙制度のマルチ・レベル化という現象が生じていることに注目し、そのようなマルチ・レベル化に対応しようとする中で、政党組織の変容が生じており、またそのことが、国政レベルにおいても政党システムの変化を引き起こすという、相互作用の関係にあることを検討した。 (3)については、今年度はイギリスで総選挙が、またイギリス労働党で党首選挙が行われたという背景もあり、特に労働党に注目する形でその政党組織の変化の新たな側面を検討した。その結果、従来は「中道化」「穏健化」の要因となると考えられていた、一般党員による一人一票制度が、今回の党首選では逆に作用していることに注目し、その理由について検討した。その結果、ソーシャル・メディア上での党員ネットワークの形成という新たな現象などが、上記の「逆作用」を引き起こしているという結論を得つつある。 以上のように、今年度の研究によって、これまでイギリス政党組織に関してあまり言及されてこなかった分権化や連邦化といった要素を理論的に導入するとともに、ソーシャル・メディアといった新しい動向も踏まえた方向へと研究を進展させたという点で、意義と重要性を持つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本研究課題の研究期間の中間年度に当たるが、1)理論枠組の形成および2)経験分析についての調査に関して、大きく進捗した。 1)に関しては、分権化・連邦化と政党組織の変容との関係について、政党システムという要素との関係の中で検討するという理論枠組の形成が、ほぼ完成に近づきつつある。この点についての一部はすでに成果として発表済みであるが、さらに完成度を高めたうえで、次年度において口頭発表を行う準備が整いつつある。 2)に関しては、イギリス総選挙と労働党党首選挙が行われたという時宜をとらえ、その政党組織の変容に向けた状況の調査が進むとともに、一定の分析を進行させた。この問題についても、次年度において成果を公開する方向で既に書き進めており、準備が整いつつある。 以上の点から、本研究はおおむね順調に進展しているということができる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の中心課題にある政党組織の変容について、その理論枠組の形成はほぼ完成に近づいており、この枠組みを政党システムや実際の政党組織の変化に当てはめる作業を今後行っていく。この点については、次年度において口頭発表を行うことが決まっており、それを踏まえたうえで、最終的な成果発表につなげていく。 また、イギリス労働党についても、本年度の調査を踏まえたうえで、分析が進みつつあり、研究は最終段階に入りつつある。この点についても執筆を進めている段階であり、次年度における成果発表のめどはつきつつあるので、このまま進展させる。 保守党分析については、現在調査を続行中であり、次年度においては、さらに補完的な調査を行ったうえで、上記の成果発表の中でその検討結果を盛り込んでいく作業を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に予定していた資料収集・調査が、日程調整上の困難によって一部延期となった。もともと資料収集は昨年から順調に進んでいたため、今年度に行う予定であった研究に関しては支障は生じなかったが、このことにより、一部の資料収集・調査を次年度に行うこととしたため、旅費を中心に次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定では、28年度においてはこれまでの研究の進展を見ながら補完的な調査・資料収集を行うことにしており、これについては予定通り行う。それとともに、今回の次年度使用分を合わせることによって、28年度に延期したイギリス保守党についての調査・資料収集を行うとともに、当初予想し得なかった党首交代が生じたイギリス労働党についての調査を追加する。 また、政党論を中心とした比較政治理論の文献・資料の収集や、研究成果についての口頭発表、また収集した資料について、イギリス政治や比較政治を専門とする大学院生を雇用してその整理を進める点については、当初の予定通り行う。
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