最終年度である平成28年度は、残された課題についての分析を継続した。具体的には、第1次安倍内閣から野田内閣までの期間について新聞報道の見出しデータを構築すると同時に、テレビにおける首相報道のメタデータを購入し、メディアの首相報道の量的パターンを検証した。その成果は、5月の選挙学会(日本大学)において報告している。 次に、首相に対する評価が投票選択に与える影響が、実際に巷間で言われるように従前よりも高まっているのかについては、1976年から2009年までの利用可能な衆議院選挙調査データを利用して検証を行った。結論から言えば、1990年代後半を分岐点として2000年代は1980年代以前よりも首相に対する評価が投票選択に大きな影響を与えるようになっていることを確認できた。この内容は、7月にポーランドのポズナンで行われた世界政治学会の大会において報告した。 最後に、ミクロのレベルで政党支持、内閣支持、争点態度の三者が如何に投票選択に結びついているのかをJES-IVデータを利用して検証した。暫定的ではあるが、自民党への評価と(自民首班)内閣への評価が投票選択に与える影響は同じ程度であるという結論に達した。従前は内閣支持が明示的に投票選択のモデルに組み込まれることはなかったので、その観点からは十分に興味深い成果だと考えている。この内容は、10月の日本政治学会(立命館大学)で報告した。 基盤Cの研究期間全体で見ると、国内学会で4回、国際学会で1回報告を行った。また、国内学会報告の1つが後に学術雑誌に掲載されている。研究継続期間内に最終的に全体をまとめる書籍の刊行に至らなかったのは残念であるが、研究全体を充実させるために当初は予定していなかった課題への取り組みも行ったので、この研究プロジェクトとしては十分な成果を上げたと考えている。期間満了後も、書籍の刊行に向けて継続的に努力する。
|