研究課題/領域番号 |
26380164
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西岡 晋 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20506919)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 資本主義の多様性 / 企業統治 / 連立政権 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、調整型市場経済レジームの政策変化の政治的メカニズムを解明するという本研究の目的に照らし合わせ、前年度に実施した先行研究の検討を踏まえつつ、本格的な事例研究を手がけた。 分析の対象としたのは、日本での企業統治の歴史において「決定的な転機(critical juncture)」となった、1990年代から2000年代初頭にかけての企業統治関連政策分野の制度改革の政策過程である。具体的には、自社さ政権下の1997年の独占禁止法改正による純粋持株会社解禁と、自公保政権下の2001年の商法改正による株主代表訴訟制度改革の事例である。この期間は、93年の細川政権発足以後、連立政権が常態化しはじめた時期に当たる。そこで、従来の自民党単独政権下での政策過程とは異なる特徴をとらえるため、自民党のジュニアパートナーである社会党(社民党)と公明党の政治行動について、イシュー・セイリアンス論の枠組みを用い、さらに前者の事例では97年のストック・オプション制度導入のための商法改正、後者では2002年の委員会等設置会社制度導入を目的とした商法改正の事例との比較を踏まえながら、分析した。 事例研究の結果、以下のことを明らかにした。自社さ政権下での純粋持株会社解禁、自公保政権下での株主代表訴訟制度改革、そのいずれの場合にも、新聞記事検索の結果からセイリアンスが高い状況にあり世論の関心を集めていたイシューであること、なおかつ社説、とりわけ一般紙のそれでは否定的、批判的な見解が強く、自民党案に対して向かい風が吹いていたこと、その二つの条件が重なったことによって、ジュニアパートナーである社会党(社民党)、公明党は世論反応的な行動に出て、自民党案に対して拒否権を発動し、法案の先送りや大幅修正をさせることに成功した。連立政権下の政策過程におけるジュニアパートナーの行動は、セイリアンスに左右されるのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、前年度の先行研究の検討を踏まえたうえで、事例研究に着手し、学会報告を行うこともできたので、おおむね順調に進展していると判断しうる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であり、引き続き事例研究を進めるとともに、より理論的な観点から考察を深め、研究成果をまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中に異動したことにともなって、予算執行できない時期が生じたため、若干の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は少額であり、研究遂行上の影響はほとんどないが、次年度はいっそう迅速に研究を進める予定である。
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