研究課題/領域番号 |
26380165
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中溝 和弥 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90596793)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インド / 貧困 / 格差 / 牝牛保護運動 / 暴力 |
研究実績の概要 |
本年度の研究の柱は二つある。第一が、インドにおける現地調査の展開、第二が、国際会議における成果発表である。 第一の現地調査については、2017年8月下旬から9月上旬にかけて、デリー、マハーラーシュトラ州で実施した。更に、2018年3月にデリー、ウッタル・プラデーシュ州、ビハール州にて実施した。現在、インドでは、牝牛の屠殺禁止規定に関連して、牝牛保護運動が活発に展開されている。この運動は牝牛保護団を代表とする種々の自警団組織によって担われているが、運動の過程で伝統的に牛肉を食してきた宗教的少数派であるムスリムに対する襲撃が頻発し、時には殺害に至る深刻な事態となっている。なぜこのような現象が頻発するようになったのか。背景に貧困や格差の問題が潜んでいるのではないか。このような問いと仮説を持って現地調査に臨んだ。 現地調査の成果は、2017年12月8日から同9日まで韓国・ソウル大学で開催された韓国南アジア学会主催の国際シンポジウム"India in Asia"で "Democracy and Vigilantism in India: New Phase of Hindutva"と題して報告を行なった。更にこの会議で得たコメントや議論を元に更にブラッシュアップした報告を、2018年1月5日から同6日までネパール・カトマンドゥで開催されたNIHUプログラム南アジア地域研究・マーティンチョータリー主催の国際会議"Peaceful Development of South Asia"において"Vigilantism in India: New Forms of Majority Tyranny"と題する報告を行なった。これらの分析において、貧困と格差の問題は関わりがあることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は最終年度となる予定であったが、子供が小さく育児に時間が取られた事もあり、予定通りに現地調査を進めることができなかった。とりわけ、ウッタル・プラデーシュ州には短期間で調査を実施したものの十分な調査は実施できず、グジャラート州では選挙直前の調査を行なうことができなかった。そのため、本研究課題を十分に遂行するために、研究期間を1年延長することとした。 このような状況であるとはいえ、現地調査は短期間の間に効率的に行ない、かつ上述のように、国際会議での成果発表を精力的に行なった。国際会議における議論では、暴力の一因としての貧困・格差に関する議論が活発に展開され、本研究課題の仮説構築に大変有意義なフィードバックを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
推進方策として柱は二つある。第一に、本来の研究期間内で十分に展開できなかった現地調査を行なう事である。第二に、研究成果を出版することである。 第一の現地調査は、2018年4月から5月にかけて、デリー、ビハール州、グジャラート州、マハーラーシュトラ州で現地調査を展開することを予定している。更に、ウッタル・プラデーシュ州でもより詳細な調査を実施することとしたい。これらの調査によって、十分なデータを得ることを目指す。 第二の研究成果出版については、本研究課題に関する議論を踏まえて現代インド政治に関する図書を出版することを目指したい。更に、昨年度の国際会議の成果を、イギリスRougledge社から出版している叢書Routledge New Horizons in South Asian Studiesのシリーズ本の一章として出版する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
子育て・育児に時間を取られ、十分な調査を行えなかったため。そのため、次年度には、次の計画で研究を進める。 第一に、本来の研究期間内で十分に展開できなかった現地調査を行なう事である。第二に、研究成果を出版することである。 第一の現地調査は、2018年4月から5月にかけて、デリー、ビハール州、グジャラート州、マハーラーシュトラ州で現地調査を展開することを予定している。更に、ウッタル・プラデーシュ州でもより詳細な調査を実施することとしたい。これらの調査によって、十分なデータを得ることを目指す。 第二の研究成果出版については、本研究課題に関する議論を踏まえて現代インド政治に関する図書を出版することを目指したい。更に、昨年度の国際会議の成果を、イギリスRougledge社から出版している叢書Routledge New Horizons in South Asian Studiesのシリーズ本の一章として出版する予定である。
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