研究課題/領域番号 |
26380166
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北村 亘 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40299061)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中核市 / 保健所 / 単独内閣 / 連立内閣 / 英国大蔵省 / 英国コミュニティ地方自治省 |
研究実績の概要 |
平成26年度に引き続き、文献調査やインタヴュー調査、データ分析を行う。さらに、1990年代以降の中核市、特例市の創設と変化、政令市制度の変化などいくつかの改革について新型インフルエンザ対策などに着目して事例分析を行った。データ分析に関しては、本学や近隣の大学の大学院生にデータ収集及び入力などの基礎作業を依頼し、実際に予算から大都市制度の変化を分析した。 さらに、他の先進民主主義諸国の事例との比較の中で、日本の特徴を明らかにする作業も行う。特に、同じ単一主権国家である英国イングランドとフランスは、日本と同じ改革の動きが進展している。平成27年度には、ヨーロッパ全体のみならず世界各国の地域別の研究所を有するオクスフォード大学にて、社会科学系のマクリーン(Iain McLean)教授とグッドマン(Roger Goodman)教授と2010年前後での地方分権改革の変化について意見交換を行った。また、自治体国際化協会(CLAIR)との意見交換も行い、そこで2010年から2015年までの保守党と自由民主党の連立内閣の下での英国大蔵省(HM Tresury)主導の財政削減の中で地方自治体および所管省庁であるコミュニティ地方自治省の弱体化政策についての関係者への共同インタヴューを実施し、資料提供を受けた。1997年から2010年までの労働党単独内閣の下での地方分権改革は地方自治体の財政基盤の強化を念頭に置いていたが、連立内閣の下での地方分権改革は地方自治体の財政基盤の弱体化を目指していることが明らかになった。この差異を生み出す要因についてさらに考察するのが最終年度の目標である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1993年からの地方分権が本格化していく過程を追い、理論的にはベラメンディ(Pablo Beramendi)の研究などをもとに精緻化をはかっている。また、日本との比較事例として英国の調査も順調に終わった。
フランスについては、ヨーロッパのテロ事件などのせいで研究の進展に少し遅れが見られるが、平成28年度に十分取り戻せると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
制度設計を行う政府与党首脳部が直面した政治状況で地方分権の進度と内容が変わるという点を時系列比較で行うことになる。その作業を通じて、日本の地方自治の変容の全体像を描き、中央政府および地域社会に対する地方政府の自律性の変化から日本の地方自治を描いた成果物を出版する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度において、国際交流基金よりの委嘱により、台湾の國立臺灣大學および國立政治大學において客員教授を務めたために研究遂行が大幅に遅れた分が、平成27年度にのしかかったからである。ただし、平成27年度においてほぼ順調に研究が進展しているため、期限内に研究を終了させる目途は立っている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度には研究の完成年度と位置づけ、基本的には東京や大阪などで研究集会を開催して、他の専門家の意見を聴取する機会をもつ予定である。事情が許せば、海外での研究発表も検討している。また、テロ騒動で遅れているヨーロッパの比較対象の調査も補充的に行いたいと考えている。
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