本研究を通じて、二院制、委員会審議方式、国政選挙のタイミングといった要因によって中央の政府与党首脳が直面する政治的不安定性が左右されるということ、および政治的不安定性が高まる場合に地方分権改革が地方政府に宥和的なものとなるということが明らかになった。このことは、党派性の違いを超えて、政府与党首脳の直面する政治的不安定性が大きいときには「国と地方の協議の場」の法制化や国庫補助負担金の裁量の拡大が進展し、不安定性が小さいときには地方自治体への財源移転を拡大するのではなく、自治体間の協力を促すような連携協約などの仕組みを入れていくということを意味している。 また、大都市制度の改革をめぐって、現状変革を目指す地方自治体の挑戦者が、改革を左右する国政政党をどのように脅して改革を進めるのかという点についても研究を拡大して行った。具体的には、2010年から2015年の大阪都構想をめぐる政治過程について、大阪に置いて大阪都構想を推進する大阪維新の会が、どのようにして民主党内閣に環境整備をする立法を行わせたのか、そして、どのようにして大阪府議会や大阪市議会で大阪都構想に反対していた公明党を賛成に回らせたのかという点を、ポピュリズム論で無理に説明することなく既存の政治的不安定性と合理的行為者としての政治家の行動で説明を行った。 最終年度として、研究成果の発表にも重点を置くことになった。英国やフランス、韓国、台湾などで成果を発表しただけでなく、国内の経済団体などでも積極的に発表する機会を得た。そのために旅費的には当初の想定を超えることになった。また、研究成果は、論説として『問題と研究』や『レヴァイアサン』などにて公刊されている。
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