研究課題/領域番号 |
26380168
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
阪野 智一 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (10162299)
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研究分担者 |
近藤 正基 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (80511998)
梶原 克彦 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (10378515)
安 周永 常葉大学, 法学部, 講師 (10612393)
城下 賢一 立命館大学, 文学部, その他 (70402948)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 保守政党 / キリスト教民主主義政党 / 右翼ポピュリズム政党 / 保守的政党システム / 移民政策 |
研究実績の概要 |
社会民主主義政党、緑の党については、我が国においても研究に蓄積がある。本研究は、これまで充分な分析がなされてこなかった保守政党の実態・思想・背景について、調査・分析を目指すものである。その際、欧州の保守政党に限定せず、日本・韓国等のアジアの国々の保守政党も比較の対象としている点に特徴がある。 今年度は、研究の初年度であるため、研究分担者各人の文献・資料収集と国際比較のための視座を得ることを目的とした。まず第1回研究会を平成26年6月21日に開催し、各分担者が研究計画の要旨を発表し、研究全体の目標との調整を図った。分析対象の時期については、2000年代半ば以降の「保守復権の時代」とすること、個別の保守政党だけでなく、韓国の事例に見られるように、保守政党システムも分析対象とすること、分析の視点として、①党の運営、②党の政策・路線、③党と社会の関係に着目することが、国際比較の枠組みとして共有された。 さらに比較の論点と対象を拡大するため、外部の専門家を招き、それに対する研究分担者との質疑応答を中心とする研究会を継続して開催した。第2回研究会を8月25日に開催し、水島治郎氏「『現代的キリスト民主主義政党』という試み―オランダ・キリスト教民主アピール」、中北浩爾氏「自民党と日本型保守政治」の報告を得た。第3回研究会を9月21日に開催し、西山隆行氏「アメリカ政治の分極化と共和党」、林成蔚氏「保守中華ナショナリズムの変容-台湾の国民政権」の報告を得た。第4回研究会を平成27年1月10日に開催し、尾玉剛士氏から「社会保障改革における保守政党の役割:フランスの場合」の報告を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1回研究会において、今年度のみならず最終年度に至るまでの全般的な研究の運営について議論し、日本政治学会での研究発表と研究成果を一冊の著書にまとめて出版することについて確認した。 本年度は、外部の専門家によるレクチャーを中心においたが、おおむね当初の予定通りの研究会を開催した。また、これら外部の専門家による報告を通じて、研究分担者が対象とするイギリス、ドイツ、オーストリア、韓国、日本以外の事例として、オランダ、アメリカ、台湾、フランスの保守政党や保守政治について、最新の実態と論点について多くの知見を得ることができ、国際比較の視座を拡大することにつながった。 例えば、経済社会政策における自由化路線、「ナショナル・コミュニティ」の重視といったキリスト民主主義の「現代化」の点で、オランダとドイツのキリスト教民主主義政党に共通点が見られることが確認された。また1990年代のフランスにおいて、年金の給付削減、医療費削減に本格的に踏み出したのは、保守内閣であった。左翼政権ではなく、伝統的に医師組合と近い保守政党が医療費削減を本格化させたのは、大統領・首相のリーダーシップの確立と議会権限の制約により、改革に対する与党議員・利益団体の抵抗を政策決定過程から排除しやすかったことによるところが大きいという。さらにアメリカでは、保守派が目指したのは共和党ではなく、保守の大同団結であり、主流派たるリベラル派への対抗を掲げて勢力を増大させてきたが、その保守派が権力を握ってワシントンの既成勢力になった後の姿は十分に構想されていないことが指摘された。 台湾の「中華型保守」にも見られるように、国際比較を進めていく上で、保守政党が置かれた各国の政治経済的枠組、イデオロギー的文脈に焦点を当てる必要性が研究分担者で共有された。
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今後の研究の推進方策 |
前年度同様、文献収集と外部専門家によるレクチャーを進めつつ、定例の研究会を隔月で開催し、研究分担者が研究成果を発表していく。また、学会で発表し、ヨーロッパ及びアジア地域にわたる保守政党の実態・思想・背景に関する包括的な比較研究として一石を投じたい。具体的には、来年度日本政治学会での発表に向けて、セッションの企画案を作成し、申請する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた外部の専門家によるレクチャーが、専門家自身の都合により開催できなくなったため、旅費、人件費・謝金において残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の残額については、翌年度の外部の専門家によるレクチャーを中心とした研究会開催の旅費、人件費・謝金に充当する。
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