本研究では、現在の世界的な比較政治学のなかで使用されており、まだ日本においては十分応用されているとはいえない統計的・計量的手法を用いて長期にわたるイギリスの選挙調査および社会調査を再精査しつつ、1960年代以降現在に至るまでのイギリス政治、特に投票行動と政党の側の対応について検討した。そうした手法は20世紀内の時点の比較政治学では、ソフトウェア等の技術的にも当時の政治学の学問状況を鑑みてもほとんど使用できなかったため、現在では同様のデータを用いたとしてもより正確で多様な分析が可能になった。本研究でもその恩恵を充分に得ることができた。より直接的には、2016年に実施された欧州連合からの離脱を問うたレフェレンダムにおいて離脱決定をもたらした、イギリス有権者および、政党の側の対応の変化を検討した。現在のところ公表されたものとしては、2016年レフェレンダムにおける有権者の決定は、中長期にわたる有権者自身の側の変化と、政党による民主主義的レパートリーの拡大という保守・労働二大政党および第三党たる自由民主党、地域政党SNP等によって推進されてきた諸制度の改革のいわば共同事業が一体となって醸成されてきたものであることを示すに留まっている。中長期的な変動の全てについては、現在ヨーロッパ各国における選挙政治の変化の中にこれを位置づける論考を準備中であり、本年度中に出版される論文集に掲載される予定である。
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