研究課題/領域番号 |
26380176
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
大澤 麦 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (30306378)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 共和主義 / クロムウェル / 護国卿 / ピューリタニズム / 立憲主義 / イギリス革命 / 憲法 / 共和制 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、共和制期イングランドの後半(1653-59年)に成立したオリヴァ・クロムウェルの護国卿体制の政治思想史的意義を、宗教改革に淵源をもつピューリタニズムと古典古代の政治的伝統に由来する共和主義という二つの思想的潮流に着目することで明らかにすることにある。 この目的に向けて本年度は研究初年度として、本研究全体の基礎となる以下の3つの項目についての基礎文献・資料の精読に研究の大きな比重を割いた。(1)護国卿政府を取り巻く諸集団の政治的・宗教的理念の探求、(2)護国卿政府の成文憲法である「統治章典」とその関連文書の検討、(3)護国卿体制下の教会体制と寛容思想の考察。(1)については、クロムウェルを取り巻く長老派議員、軍隊幹部、共和派を具体的な検討対象にした。また(2)については「統治章典」そのものに加えて、(ⅰ)「議会憲法」、(ⅱ)「抗議」、(ⅲ)「謙虚な請願と勧告」の3つを分析した。(3)については護国卿体制下の「聖職者審査委員会」と「聖職者追放委員会」の意図と機能を明らかにする文献・資料を調査した。これらの研究成果の一部は、後続の「研究発表」の項に記載したとおり、第9回日本ピューリタニズム学会研究大会で研究報告と、『法学会雑誌』(近刊)への寄稿論文の中で公表することができた。 なお、今年度の上記の研究を遂行するにあたっては、10~11月、イギリスの大英図書館ならびにエセックス大学において、資料調査および現地の研究者との意見交換を行った。また、本研究に深くかかわる政治思想学会(5月)、日本西洋古典学会(6月)、日本宗教学会(9月)、宗教哲学会(3月)の各研究大会・研究会に参加して、関連諸分野の研究者との意見交換を行うことで、知見を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は上記「研究実績の概要」にも記した通り、本研究全体にかかわる資料・文献の収集と精読に力を入れる予定であった。この点について、(1)護国卿政府を取り巻く諸集団の政治的・宗教的理念の探求、(2)護国卿政府の成文憲法である「統治章典」とその関連文書の検討、(3)護国卿体制下の教会体制と寛容思想の考察、という3項目における資料収集と読解については、望外の大きな成果を得ることができた。また、この過程で1つの学会報告を行い、1編の学術論文を執筆することで研究成果の公表に取り組めたことも、大きな成果であったと考えている。 以上述べたことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に遂行した研究を下地にして、「研究目的」に記した4つの論点、すなわち、(1)「統治章典」とその関連文書の検討、(2)護国卿政府を取り巻く諸集団の政治的・宗教的理念の考察、(3)共和派の国家論の考察、(4)護国卿体制下の教会体制と寛容思想の考察、に取り組んでいく。いずれも、資料や文献の丹念な読解を中心にした方法で推進される。とりわけ来年度は、今年度においてやや不十分であった(3)と(4)の項目に力を入れることにしたい。 最終的には、共和主義とピューリタニズムという二つの思想的潮流への注視により、 国家論と教会論という本来異なる二つの視点を相互補完的に援用することで、護国卿体制の政治理念の特質を、従来にはない立体的かつ総合的な形で、イギリス共和主義思想の伝統の中に位置づけたいと考えている。これによって、世俗一辺倒に考えられがちな共和制・共和主義の政治思想の宗教的側面に光を当て、公共性の観念の新しい水源を発見することが目指される。 なお、こうした探究の途上において得られる個別的な研究成果は、学会発表や個別論文において逐次公表していくことを、可能な限り実行していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
「次年度使用額」1668円は、必要な物品を購入するには少額過ぎるために、翌年度以降の研究費と合わせて使用することが合理的であるとの判断によって生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究も本年度に引き続き、主として資料・研究文献の精読・分析を通じて推し進められていく。したがって、必要な研究経費としては、①資料集・専門書の購入費、②他の大学や研究機関や図書館等の蔵書を参照・複写するのに要する旅費と文献の複写費、③資料の整理等の業務をアルバイトに行なってもらう際の謝金、④そして文具品を中心にした若干の消耗品費などが挙げられる。 このうち、とくに重要なのは①であり、よって次年度も研究経費の大きな配分がこれに割り当てられている。②は①を補うために毎年度欠かせない資料収集費であるとともに、他大学・研究機関に所属する研究者との意見交換のためにも必要である。次年度は、国内では参照できない文書の調査のために、1週間前後のイングランドへの海外出張を計画している。
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