本研究の目的は、共和制期イングランドの後半(1653-59 年)に成立したオリヴァ・クロムウェルの護国卿体制の政治思想史的意義を、宗教改革に淵源をもつピューリタニズムと古典古代の政治的伝統に由来する共和主義という二つの思想的潮流に着目することで明らかにすることにある。 研究の最終年度である本年度は、前年度までに遂行した研究を基礎にして、研究目的として当初設定した4つの論点、すなわち(1)「統治章典」とその関連文書の検討、(2)護国卿政府を取り巻く諸集団の政治的・宗教的理念の考察、(3)共和派の国家論の考察、(4)護国卿体制下の教会体制と寛容思想の考察、のすべてを再吟味しつつ、研究全体の総括を試みた。 その内容の一部は、平成28年5月29日の政治思想学会第23回研究大会(於、名古屋大学・東山キャンパス)での研究報告「共和国のモーメント:O・クロムウェル護国卿体制下の共和派(コモンウェルス=メン)の理念」によって公表した。また本研究全体のさらなる具体的な研究成果としては、首都大学東京法学会編『法学会雑誌』57 巻2 号(平成29年1月)に掲載された「クロムウェル護国卿体制における共和派(コモンウェルス=メン)の政治理念」において、これを公表することができた。 なお、今年度の上記の研究を遂行するにあたっては、10月~11月にイギリスの大英図書館においての資料調査を行ったほか、本研究と深くかかわる政治思想学会(5月)、日本ピューリタニズム学会(6月)、日本政治学会(10月)、宗教哲学会(3月)の各研究大会に出席して、関連分野の研究者の知見に触れられたことが、大変重要な意味をもった。 今後は、本研究を専門的な研究書(単著)として刊行する計画を具体的に立てていきたい考えている。
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