本研究では、既存の世論調査データから、福祉国家と新自由主義に関係する意見の検討を行い、以下の知見を得た。社会保障への支持の高い傾向が近年、不況下でも強まっていること、新自由主義的施策に対しては、反対も少ないが積極的な支持も多くないこと、さらに新自由主義と親和性が高そうな個人化の傾向はむしろ弱まっていることなどである。福祉国家が衰退し新自由主義がそれに取って代わるといった図式は妥当ではないと結論づけることができそうである。同時に本研究では、世論調査自体がもつ政治的効果についても考察を行い、アジェンダ・セッターであると同時にアジェンダ・テイカーでもある世論調査の二面性を指摘した。
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