研究課題/領域番号 |
26380179
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研究機関 | 下関市立大学 |
研究代表者 |
水谷 利亮 下関市立大学, 経済学部, 教授 (00310897)
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研究分担者 |
平岡 和久 立命館大学, 政策科学部, 教授 (70259654)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 二重行政 / 融合型地方自治 / 府県機能 / 政令市 / 良い二重行政 / 悪い二重行政 |
研究実績の概要 |
本研究は、行政学と地方財政論の視点から「融合型の地方自治制度における『二重行政』の研究」をテーマとする。融合型地方自治制度のもとで府県と市町村との関係における「二重行政」論に関して、非効率やムダなど病理に偏っていた「悪い二重行政」論の視点に加えて、自治の総量を高めるなど連携・協働する二重行政の実態・機能といった「良い二重行政」面にも注目し、既存の議論を整理・分析しつつ実証的に研究しながら理論的な仮説を提示することを目的としている。二重行政の機能的側面も含めて最新動向を踏まえ融合型自治制度がもつ柔軟性と可能性を再発見しながら、道州制導入論やさらなる市町村合併論に対して府県制度を再評価して批判的な知見と論拠を提供し、府県機能の具体的な発展の方向性を学術的に提示する意義がある。 研究期間3年の2年目の平成27年度は、行政学・地方財政論・地方自治論における学術的な文献研究を進展させた。また、大阪市で「大阪都構想」に関する住民投票が行われ否決されたこともあり、府県と政令市に焦点をあてて「二重行政」のあり方について5道府県で道府県庁の関連部署および当該管内政令市にヒアリング調査と関連資料の収集を行い、平成26年度の研究成果とつき合わせて自治体現場での論点や傾向を整理・分析した。政令市以外の市町村と府県との「二重行政」のあり方についても2府県で調査・研究した。 研究成果として、二重行政問題を解消するために二層制のあり方の改革が必要と考える自治体は、大阪府・市と横浜市など少数であり、ほとんどの自治体では検討の場を設けて個別の二重行政の課題ごとに丁寧に議論・解決している実態がより明らかになった。一見二重行政にみえるような施策・事業でも、道府県と市町村が相互に補完・連携しながら地方自治を充実させている実態面も確認できた。それらの成果を論文にまとめた。2016年5月に学会報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度と27年度において、政令市を抱える16道府県域のうち13道府県域(北海道、宮城県、新潟県、埼玉県、千葉県、神奈川県、静岡県、愛知県、京都府、兵庫県、広島県、岡山県、熊本県)で道府県や政令市において二重行政に関する問題を所管している部署に対してヒアリング調査と資料収集を行った。旧5大都市とその後に政令市となった市、及び「平成の大合併」以降に政令市となった市といった3つの類型のそれぞれに含まれる道府県域に対して二重行政問題に対する調査・研究を行い、道府県と政令市に関する二重行政問題への自治体の対応のあり方については、その全体的な特色と傾向を把握することができた。 また、京都府域においては、消防や衛生研究所などの個別の二重行政課題について関連部署に対して詳細な調査を行った。さらに、政令市以外の市町村と府県の二重行政のあり方についても長野県において県庁や県庁出先機関、及び市町村や広域連合などにもヒアリング調査と資料収集を行った。 それらの調査・研究により、融合型地方自治制度のもとでは、道府県と市町村は、個別の事業ごとに解消すべき二重行政問題・「悪い二重行政」は確かに存在するが、それらの問題に対しては両者が丁寧に検討し、地道に問題解決に取り組んでいる場合が多いことが明らかになった。一見二重行政にみえるような施策・事業でも、道府県と市町村が相互に補完・連携しながら地方自治を充実させている実態面も確認でき、仮説の検証ができつつあるので、3年の研究期間のうち2年を終えて、研究の目的を順調に確実に達成していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、3年の研究期間の最終年度である。まず、行政学・地方財政論・地方自治論における学術的な文献研究をさらに進展させる。 研究目的達成のためのヒアリング調査と資料収集については、道府県と政令市の総合調整を行う企画・総務部門を中心とした部門に対してはほぼ終えたので、個別二重行政問題を担当する所管部門に対する調査を中心に行う予定である。また、政令市以外の中核市などの市町村と道府県における二重行政のあり方についても、府県出先機関や広域連合などを含めてヒアリング調査と資料収集を行って、融合型の地方自治制度のもとでの道府県と市町村による二重行政のあり方と地方自治の取り組みについて研究を進展させ、研究目的の達成に向けて着実に取り組む方針である。 なお、現在のところ、研究計画の変更あるいは研究を遂行するうえでの課題はないので、研究計画の着実な実施につとめるだけである。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒアリング調査に関する旅費の支出において、当初予定していた調査は実施したが、日程の短縮などで残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
この残額は、研究目的を達成するために2016年度に行うヒアリング調査の調査先を1ヵ所増やして研究内容を充実させることに使用する予定である。
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