研究課題/領域番号 |
26380181
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
中田 喜万 学習院大学, 法学部, 教授 (50406873)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 日本政治思想史 |
研究実績の概要 |
本務校から2年目の在外研修の許可を得て、本年度は米国カリフォルニア・バークリーの一年間が終了後、9月からただちに英国オックスフォードに転じた(こちらも一年間の滞在予定)。同じ英語圏でありながら、両国の政治文化の様々な差異に驚かされる日々であった。 本課題との関連にしぼっていえば、英国の君主制との対比で、米国のような共和制において国家統合がいかに理念を(そして社会が多様であればあるほど、強い理念・イデオロギーを)必要とするかを理解した。このことを宗教史から裏打ちさせる見通しを得た。近世の英国が国教会という正統の確立によって旧教も新教も抑えこみ宗教対立の問題を封印してしまったのに対して、アメリカでは信教の自由を掲げて諸派の共存が図られた(共存というより、むしろ離散して互いに干渉しないのに足りる十分な空間があった)。この国家と宗教のあり方の差異が、やがて両国の世俗化の仕方にも反映されるだろう(おそらく仏国、独国にもそれぞれの歴史的特性があるのだろう。比較したい)。もちろん、その構図が一筋縄でいかないことは、いくつもの宗派の教会が基礎となって大学街を形成しているオックスフォードにいると実感される。王家それ自身の宗旨が(国教会でなく例えばカトリックに近づくと)政治的問題化したことも学んだ。 強烈な理念とともに建国された共和制国家の歴史が、あたかも建国の理念だけでおおかた説明できるかのような錯覚を与えるのに対して、そのような理念をもたない君主国はそうはいかない。英国の場合、複雑な制度の来歴をたどるとすぐに数百年も遡ってしまう。そのことを、近世日本の由緒来歴を重んじる武家体制、また近代日本の国体論のように神話まで遡及させながら理念も後付けさせようとする議論の仕方と対照させながら考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定された7月の学会報告は無事にこなしたものの、海外での研究に支障がつきまとった。 一番の誤算だったのは、この一年間、実質実効為替レートで過度の円安にふれたことだった(30年ぶりの円安水準という)。英国では物価が日本で生活するほぼ2倍の水準で、率直に言っていかに生き抜くかに労力を費やしてしまった。不動産価格の高騰は、カリフォルニア州ベイエリアも、オックスフォードも同様で、これはどうにもならない。 オックスフォードでは大学の授業を聴講して、広く(薄く)学んだものの、それも間接的な研究活動にとどまる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度はこの研究計画の最終年度であり、長期在外研修から夏に帰国する予定である。帰国後は、海外で調査できなかった文献にあたり、また海外から持ち帰った文献を読み進めて、新たな原稿に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
この予算規模で残金が約2万5千円ということは、執行率98.6%で、ほぼ予定どおり年度内で消費してしまったことを意味するだろう。航空運賃の変動を勘案すれば、残額の発生は誤差の範囲内と思われる。
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次年度使用額の使用計画 |
残金は新年度の旅費とあわせて執行するつもりである。
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