古代の天皇号は中世に用いられなくなったが、江戸時代に復活した。その源泉の一つが当時の歴史書であった。水戸学『大日本史』よりも以前、林家の『本朝通鑑』に遡って称号の復活を考えることができる。このことは、同時に進行した、儒学的教養にもとづく仏教批判といわば「早熟な」世俗化に関わる。王権を宗教でなく歴史によって説明し始めたのである。それは徳川体制の当初の想定を超えていた。 ここでいう世俗化は西洋思想史におけるそれと同義ではない。それにもかかわらずあえて比較すれば、英国のように世俗化以前に革命で王権が制限された政治と、世俗化以後にあえて天皇大権を確立させようとした日本との対照が見てとれる。
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