予想外の多忙さから予定どおりに調査が進められず、研究費もかなりの金額を使い残して返還することになった。そのため、各国の研究についてそれぞれに未完な状態であり、論文などの形での公表は遅れている。日本に関する部分は、過去の公募出身候補者・議員へのインタヴューを地道に可能な範囲で進めた。アメリカに関する部分については、2016年選挙の展開を受けて、当初考えていた分析枠組みを大幅に見直さざるを得なかったため、現地調査も含めかなり中途の状況で本研究期間を終えることとなった。 当初予定していたボツワナについては、現地での調査の見通しがなかなか立たず、最終年に、予備選挙を通じた候補者選定方式が定着しているガーナに対象を移して調査を行うこととした。ボツワナの事例は一党優位体制のもとでの候補者選定を日本と比較できる事例として位置づけていたが、ガーナでは二大政党制のもとで党員による大規模な予備選挙が実施されてきており、アメリカとの比較に適した事例である。ガーナでの現地調査では3週間ほど滞在できたという時間的余裕を生かして、多数の国会議員や政党幹部、学生活動家などから、政治的リクルートメントや候補者選定のあり方について詳しく聞き取りをすることができた。 今後は、こうした聞き取り記録を整理して政治進出への経路をモデル化し、ガーナでの追加的な現地調査を行い、予備選挙のデータ分析と合わせてガーナにおける候補者選定のあり方を包括的に描き出す計画である。これをもとに、ガーナとアメリカの予備選挙制度やそれに伴う選挙活動のあり方がそれぞれ、政党に公認される候補者のタイプにどのような影響をもたらしているか比較分析する一方、日本のように候補者選出過程における透明性が低い事例と比べて、可視性の高いガーナの候補者選出過程が女性や若手などの政治進出に対してもつ効果についても比較分析していく予定である。
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