研究課題/領域番号 |
26380183
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大串 敦 慶應義塾大学, 法学部(三田), 准教授 (20431348)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エリート / ロシア / ウクライナ / 政治体制 / 国際交流 |
研究実績の概要 |
2016年度の研究業績は、論文一本と国際学会報告一つである。論文は、本研究計画の史的起源となるソ連解体に関連したものであり、2017年度中に論文が刊行される(脱稿済)。本稿は、ソ連の共産党体制の終焉を跡付けたものであり、ロシア革命100周年を記念した5巻本の論文集に収められる。ソ連解体期に関しては、改革者としてのゴルバチョフソ連大統領を高く評価する通説的が議論があるが、本稿の見解はそれとは異なるものであり、一般からの反響もあるかもしれない。 現代のロシア政治に関しては、2016年3月に公刊された業績「ロシアにおける混合体制の成立と変容」で議論した内容を発展させ、マシーン政治弱体化以降のロシア政治体制を考察して、アメリカのスラブ東欧ユーラシア研究学会(ASEEES)で報告し、改訂版を英国スラブ東欧研究学会で2017年4月1日に報告した(したがって英国での報告は、本実績報告には記載されない)。その邦語版を2017年度中に論文を公刊する予定であり(2017年4月に概ね肯定的な査読結果が来た)、英語版も近日中に投稿予定である。この論文では、マシーン政治の弱体化後、特にウクライナ危機以降、ロシアの政治体制はポピュリスト型権威主義になりつつあることを指摘した。このマシーン政治の弱体化を考察するにあたり、地方知事のデータベースを作成した。 ウクライナ政治に関しては、2017年2月にはキエフで現地調査を行った。これと2017年夏に行う予定の現地調査に基づいて、2017年11月にASEEESで報告する予定である(パネル提案は学会に受理されている)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ロシアに関してはかなりの進展がみられるが、ウクライナに関しては、ドンバス地域での現地調査を断念するべきか、見極めが極めて困難であったので、結果として補助事業期間延長の申請をすることになった。
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今後の研究の推進方策 |
ロシアの政治体制、エリートに関しては、本年度中に論文を二本程度投稿する予定である。ウクライナに関しては、旧地域党を引き継いだ野党ブロックを研究対象に定め、ドニプロペトロウシク州で現地調査を行ったうえで、アメリカのスラブ東欧ユーラシア研究学会で報告の上、報告論文の公刊を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウクライナでは、研究計画当初ドネツクなどドンバス地域での現地調査を予定していたが、2014年以降のウクライナ危機とドンバスでの戦争により現地調査が困難になった。現地情勢の安定後に調査を再開したいと考えていたが、情勢の安定を見極めるのが極めて困難であり、時間が経過してしまった。結果、補助事業期間の延長を申請することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
ドンバス地域での現地調査を断念し、ウクライナ他地域での現地調査に切り替える。現状ではドンバス地域がウクライナ国内政治に戻ってくることは当分あり得ない。ドンバス抜きのウクライナ政治がどのように展開されるのかを考察するために、かつてドンバス地方を基盤にしていた地域党の残党によって形成された野党ブロックに焦点を当てて、ウクライナ危機以降のウクライナ政治を考察することにする。当該助成金はウクライナのドニプロペトロウシク州での現地調査を中心に支出する予定である。
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