研究課題/領域番号 |
26380185
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
高安 健将 成蹊大学, 法学部, 教授 (90399783)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 議院内閣制 / 権力分立制 / 政治不信 / 政党政治 / 執政府中枢 |
研究実績の概要 |
本研究は、英国政治と日本政治の比較研究であり、2つのパートから成り立っている。 日本政治については、戦後日本にあって政権を長く担当した自民党の組織構造の変容に注目した。政権党は議院内閣制を作動させる要である。本研究では、自民党が利益の集約と表出、権力の創出とコントロールにいかなる影響をもたらしたのかを、集合行為問題という概念を中心に据え、理論的に一貫性のある説明を試みた。また、本研究では、日本の政治システムが両院の政党構成によって議院内閣制として運用される場合と、権力分立制として運用される場合があると整理し、この揺れが日本政治の権力パターンの変動性を説明する要因であると捉えた。成果としては、2014年度日本選挙学会の共通論題報告、『選挙研究』第30巻第2号、英国政治学会における報告というかたちで発表された。日本政治における信頼の問題について検討した業績としては、「政治における「信頼」はどこにあるか―解散とデモクラシーの行方」『世界』(2015年1月号)がある。 英国政治については、サッチャー政権を起点としブレア政権時代にみられた政治運営メカニズムの集権化に注目した。このような政治運営メカニズムの変化は、従来の政策決定パターンが十分な効果を発揮できず、首相の期待に応え、あるいは人びとの評価と信頼を獲得するのに不十分であると捉えられているという背景をもっている。結果的に政治指導者たちが伝統的な政策決定パターンに不信と不満を抱き、首相府や内閣府、あるいは財務省への集権化を進めたというのが本研究の観察である。これに関連する研究業績はSeikei Hogaku Vol.80に発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の課題は、(1)日英の議院内閣制が抱える今日的問題の把握、(2)司法の日英比較の作業を行うことを目的とした。 (1)日英の議院内閣制が抱える今日的問題については、英国の議院内閣制が従来はマクロでは集権的である一方、メゾ・レベルでは政策コミュニティによる閉ざされた政策決定システムが基本的な姿であり、司法の救済も十分ではなかったことが確認された。日本については、かつての問題が中心的指導力の漸進的低下だったのに対し、今日の問題が中心的権力の過剰な強さ、あるいはコントロール不足が明らかにされた。両国ともアクセス・ポイントの少ないシステムであり、今日の議院内閣制の問題の中心が民意集約機能の低下と政治指導者の信頼の低下であることも確認された。さらに本研究からは、日英両政府の集権化傾向がまさにこうした民意集約機能や政治指導者への信頼の回復あるいは有権者との再接続を目指したものがあることが示された。 (2)司法については、英国政治の動向を整理し、1998年人権法やEU法が政治と司法の関係に与えた影響を検討している。さらに権力分立制という場合、権限移譲の影響は重要であり、スコットランド政治が英国政治全体に与える影響も考察した。日本の司法については、基礎文献の収集を進めている段階である。 以上から研究プロジェクトは完全ではないが、順調に進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究活動は、英国の権限移譲と司法、二院制と議会の特別委員会の動向と今後の方向性、日本の地方分権と司法、二院制の動向と今後の方向性について焦当てる。特に英国では2015年に総選挙があり、イングランドとスコットランドの関係、あるいは欧州と英国の関係などについて変化の胎動がある。
本研究では、当初の予定であった改革の詳細の検討以上に、議院内閣制と権力分立制の根源的思想的違いを捉えることを目指す。特に権力融合型の議院内閣制に対して、権限移譲/地方分権や司法の積極化がいかなる変化をもたらすのかを考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間の初年度にデスクトップのパソコンの購入を意図していたが、買替えのタイミングの調整のために、この購入を2年目に行いたいと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究のテーマである議院内閣制の変容を、特に政府と議会、司法、地方・地域政府との関係、あるいは英国の場合には欧州連合との関係で捉えようとするものである。次年度も、このテーマを追求するために、関係資料の収集、文献の渉猟、関係者への聞き取り、専門家との意見交換を行う。資料整理や調査、研究執筆作業を行う環境整備のためにも研究費を使用する予定である。
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