研究課題/領域番号 |
26380185
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
高安 健将 成蹊大学, 法学部, 教授 (90399783)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 議院内閣制 / 権力分立制 / 首相 / 二院制 / 政府内政策決定 / 政党政治 |
研究実績の概要 |
本研究は、英国政治と日本政治の比較研究である。 日本政治については、首相の権力に対する評価が戦後なぜ安定せず、変化してきたのかを検討した。日本は英国と同じ議院内閣制と言われながら、なぜ首相のパフォーマンスに関する評価が異なるのか、また定まらないのかを、特に首相と両院の関係から考察した。その成果は、『成蹊法学』に ‘Is The Prime Minister Too Weak or Too Strong?: An Institutional Analysis’と題する論文として発表された。 英国政治については、英国の政治運営の基本的なパターンが変化してきたのではないかとの問題意識に基づき、学説の展開と現実政治の変化の連動を捉える試みを行った。集権的であると言われる英国政治にあって、実は政策決定は政府内外で相当程度に分権的であったことを確認する一方、1980年代後半以降、徐々に集権化が進んだことを明らかにした。特にマスメディアの監視、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの権限委譲を受けた議会の権限、裁判所、欧州連合や欧州人権裁判所の影響力が強まるほどに、政府は集権的に問題解決を図り、あるいは図るようにみせようとする傾向を示してきた。この成果は、2015年度比較政治学会共通論題報告「責任政治の挑戦」にまとめられた。 このほかには、2015年にあった英国の総選挙結果の分析として、『世界』に「変化の胎動を秘めた現状維持 - 2015年英国総選挙」と題する論考を発表した。また、日英比較の人的交流の一環として、2016年3月25日より、University College Londonのメグ・ラッセル教授を招いて研究会や講演会を行い、有意義な知見の交換ができた。なお、ラッセル教授の招聘については、北海道大学の岡田信弘教授の科研費基盤研究(A)「二院制に関する動態論と規範論の交差的研究」との共同プロジェクトとして実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目、2年目と英国政治、日本政治双方に関する研究を進めることができている。権力分立制がいかにして日英両国の政策決定や、政策決定の中心的主体である首相を拘束するのかについての研究は着実に進められてきた。 また、実績として発表する機会はまだないが、英国の司法については、その歴史的展開と今日的状況という観点から分析は進んでいる。また、本研究を総括するうえで重要となる、議院内閣制と権力分立制の根源的思想的違いについての考察も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は研究の最終年度となる。今年度の課題は大きく分けて3つある。 第一は、研究期間最初の2年で残されている課題として、英国では権限委譲、日本では地方分権が政府に対してどのような拘束力を発揮しているのかに関する考察を進めるという課題である。 第二に、二年目で分析を進めた司法の影響力と、議院内閣制と権力分立制に関する理論的検討について、論文というかたちで発表を行う。 第三に、研究全体の成果として、特に英国の政治運営メカニズムに関する書籍を刊行する。英国の議院内閣制は、集権性と多数代表制を特徴としてきたが、それが今日、変容しつつあることを論証することを目的とした研究書を出していく。これにより、研究全体の総仕上げとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際シンポジウムを開催し、そのために海外から研究者を招聘した。その際、先方の研究者より、一連のシンポジウムや研究会の実施時期について、2016年3月25日から同年4月6日とする希望があった。その結果、諸事業が2015年度と2016年度をまたいで行われることになり、2016年度に研究費を繰り越して執行することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
海外からの研究者招聘に使用する(実施済み)。
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