研究課題/領域番号 |
26380189
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
坪郷 實 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (20118061)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 比較政治 / 市民社会 / ソーシャル・キャピタル / 協同組合 / 環境団体 / 再生可能エネルギー / エネルギー政策 / 自治体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、エネルギー転換のドイツ・モデルの総合的分析を行なうとともに、日本におけるエネルギー政策転換のための課題を分析することである。今年度は、日本における現状と課題について重点的に調査を行った。 第1に、国際比較分析のための分析枠組みをより明確にするために、引き続きソーシャル・キャピタル論と市民社会論に関する研究動向を整理分析し、編著を刊行した。 第2に、エネルギー転換のドイツ・モデルの総合分析に関しては、100%再生可能エネルギー地域の動向、エネルギー協同組合など地域主導、市民主導の再生可能エネルギーの普及拡大の動向を調査した。その成果は、ドイツでは、地域主導の動きや環境団体の活動が活発であり、順調にエネルギーや電力における再生可能エネルギーの割合が拡大していることを把握できたことである。 第3に、日本における現状と課題については、2016年4月から家庭電力の自由化が行われたが、関連して新たな電力の供給事業者の動向について調査を行い、東京都内の市民電力の現状を調査した。その成果は、協同組合が設立した生活クラブエナジーなど再生可能エネルギーによる電力供給を行う事業者が準備を進めていること、こうした事業者にとって再生可能エネルギーによる電力生産の供給先の確保が必要であること、日本の固定価格買取制に多くの課題(拡大の目標、優先接続、電線網の整備等)があることなどである。 第4に、地域における再生可能エネルギーによるエネルギー供給システムづくりに取り組む事例として、道志村のバイオマス供給システム(マシュプーリーシステム、道志の湯薪ボイラーなど)づくり、茅野まちづくり太陽光発電所の取り組み、長野県の一村一エネルギーの取り組みを調査した。その成果は、メガソーラー発電所設置における地域の合意形成の重要性、自治体のイニシアティブと多様な主体の協力が重要であることなどである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際比較のための分析枠組みに関する研究については、ソーシャル・キャピタルとの比較により市民社会論の論点整理を引き続き進展させることでできた。 エネルギー転換のドイツ・モデルの総合分析に関しては、エネルギー政策関連など最新のデータを収集し、重要な知見の整理を進めることができた。 日本における事例研究に関しては、東京都内の市民電力の全体的動向に関する調査を行い、長野県における再生可能エネルギーの促進政策、道志村におけるバイオマスタウンの事例、茅野市におけるまちづくり太陽光発電所づくりの事例について、現場で聞き取り調査を行うことができた。この事例研究を通じて、日本におけるエネルギー転換の現状を把握し、課題の整理を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
27年度も研究協力者の参加により、市民社会研究会を開催したが、28年度も引き続き、市民社会研究会を開催し、エネルギー転換のドイツ・モデルの総合的分析と、日本における事例研究を行い、日独比較の観点からの日本におけるエネルギー政策転換の現状と課題について報告書をまとめる予定である。 ドイツ・モデルの総合分析に関しては、28年度8月に海外調査を行い、最終報告書をまとめる予定である。 日本の現状と課題に関しては、協同組合による取り組みである生活クラブエナジーの事例を調査し、家庭電力への再生可能エネルギーの供給の可能性を分析する。 さらに、環境団体による取り組みの事例(脱石炭火力の提案など)、地域や自治体レベルにおけるエネルギー転換の取り組みの事例を調査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度は特別研究期間のため、ドイツに一年間滞在をして重点的にドイツ調査を行うことができた。今年度の27年度は、日本調査を重点的に実施したため、ドイツ調査は28年度に繰り延べすることにし、外国旅費を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度は、8月にドイツ・モデルの総合的分析の最終報告書を作成するためにドイツ調査を行い、外国旅費を使用する。さらに日本の事例に関しても、研究協力者も参加して、引き続き現地調査と全国の市民電力の現状に関するアンケート調査を行う予定であるので、国内旅費とアンケート調査のための費用として使用する。
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