本研究の目的は、エネルギー転換のドイツ・モデルの総合分析を行なうとともに、日本におけるエネルギー政策転換のための現状と課題を分析することにある。 第1に、ドイツ・モデルの総合分析に関しては、連邦議会会派の政策スタッフや議員、 100%再生可能エネルギー地域(グレーフェンハィニッヘン市長、ハーツ郡局長)での調査により、エネルギー転換が課題を意識しながら順調に進んでいることを確認した。 第2に、日本のエネルギー政策転換の現状と課題に関しては、自治体及び市民主導の事例について調査を行った。自治体の事例では、環境と福祉のまちづくりを目指す岩手県紫波町オガールプロジェクトの調査を行った。 市民電力については、まず会津電力(福島県)でヒアリングと見学を行った。会津電力は、「エネルギー革命による地域自立」を掲げ、太陽光発電・バイオマス事業に取り組む、地域の多様な担い手の連携による事業展開のモデルである。次に大都市部である東京都における市民電力の事例として、せたがやエネルギー合同会社、足温ネット(江戸川区)、株式会社エコロミ(調布まちなか発電)、多摩電力合同会社(多摩市)でヒアリングを行い、市民発電所を見学した。さらに、気候ネットワーク豊田陽介氏の協力により「市民・地域共同発電所全国調査2016年」を実施した。同調査によれば、全国の市民・地域共同発電所は2013年と比較して、2017年当初約200団体、1028基へと倍増している。 今年度の調査から、市民電力の資金調達手法が多様化し、信託方式などより有効性のある方式が望まれること、公共施設の屋根貸しが行われているが、無償の場合と有償の場合があること、FIT制度の問題点(買取価格の低下、入札制度など)、自治体ないし市民主導の事例において「まちづくり」の視点が重要なこと、市民電力の活動支援のネットワークが重要であることなどが把握できた。
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