本研究の目的は、政治経済制度の転換が、経済アウトプットに一時的にマイナス影響を及ぼすことを実証で明らかにする点にある。 本年度は、本研究の最終年度として、今まで実施してきた研究成果を論文などの形に取りまとめるとともに、学術誌の修正要請(コメント)に応じるべく理論・実証部分の洗練化に努めた。具体的には、理論面では動学モデルの部分の厳密性が欠けているという指摘に応じ、理論部分の大幅な修正を実施した。並行して、厳密な証明に必要な数学的手法(解析論及び動学最適化論)を習得しつつ、論文に反映させた。実証部分でも、理論モデルと実証モデルの整合性について抜本的に見直し、より緻密な実証モデルを構築し実証を行った。学会や研究会などでのコメントに基づき、ベイズ統計の応用についても検討したが、論文に採り入れるには至らなかった。データ分析を補完するため、鉄鋼産業とパルプ産業についての歴史的なケーススタディも進め、ケーススタディも採り入れた書籍の執筆も進めたが完成には至らなかった。 研究成果は前年度末から英文学術誌に投稿し、却下された学術誌はあったものの、査読委員から修正要請のあったものについては修正を行い再提出を行った。その過程で、学会や研究会などで積極的に発表を行った。研究成果をより一般向けな媒体で発表することにも注力した。 前年度まで作業が遅れていた多国間の実証分析については、各国毎に制度要素を数値化したデータを収集・整理し、マクロの実証分析を行った。理論部分についても、多国間での実証と整合的とするため一部修正を行った。それらを論文の形にまとめた上、海外の大学の研究会やワークショップなどで発表し、英文学術誌に投稿を行った。
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