本研究では、包括的な制度転換が、たとえより効率的な制度への転換であったとしても、一定の条件の下で一時的な経済的アウトプットの低下を招くことを理論及び実証で示した。理論面では、一般に受けいられている想定条件から演繹的・数理的に、そのメカニズムを導いた。実証面では、1990年代からの日本での構造改革を題材にした産業別の分析と、多国間の分析を実施した。 この点についての過去の研究としては、旧共産圏諸国が資本主義化した際の一連の研究があるが、本研究は、90年代の多くの国で採り入れられた新自由主義改革など、資本主義の異なる類型間の制度転換であっても、一時的なアウトプットの低下が生じうることを示した。
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