研究課題/領域番号 |
26380192
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
山岸 敬和 南山大学, 外国語学部, 教授 (00454405)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 医療保険政策 / アメリカ合衆国 / オバマケア |
研究実績の概要 |
本研究は通称「オバマケア」と呼ばれる患者保護及び医療費負担適正化法(以下、オバマ改革)が成立、施行された後の5年間に、この改革によって国にどのような医療制度の変化がもたらされたのか、制度を巡る政治過程がどのように変容し、それがアメリカ市民にどのような形で受け入れられていくのかを明らかにする事が目的である。
アメリカ合衆国に皆保険制度をもたらすオバマ改革は、アメリカ政治における最重要争点であり、アメリカ政治の流れを長期間にわたって大きく左右するものである。本法案の撤廃を目指すトランプ政権下となったアメリカにおいて、特に“連邦政府及び州レベルの変化”という視点を持ちつつ、長期的な歴史的変化の中にオバマ改革を位置づけ、改革とその撤廃を目指す流れが今後及ぼす制度的、政治的変化への影響を探っていきたい。特に本研究では新しい政策がどのような制度的・政治的変化を生み出して行くのかという<経路依存性>(Pierson,Politics in Time,2004などを参照)を巡る議論についても貢献を果たすことができると考えている。
本研究において、3年目となる本年は、大統領選挙の年に当たり、医療保険政策がどのように大統領選挙に影響をもたらしているか、政治学者、及びメディア関係者に大しての聞き取り調査を行った。また、本研究の途中での成果として、2冊の書籍『ポストオバマのアメリカ』(うち、序章「歴史的地殻変動の中のオバマ政権」と第7章「医療政策-制作の経路依存性から見たオバマケア」を執筆)、『医療化するアメリカ-身体管理の20世紀-』(うち、第5章「二〇世紀前半までのアメリカ病院制度の発展-「公共空間」の主導権をめぐる争い」を執筆)を出版することができたことは大きな実績と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度初回のアメリカ合衆国における現地調査では、医療制度改革の執行状況について、ジョンズ・ホプキンス大学図書館において資料調査を行ったほか、同大学のマシュー・クレンソン政治学部名誉教授と、アダム・シャインゲイト政治学部准教授、またジョージタウン大学のマイケル・ベイリー政治学部教授等の研究者、日本テレビの近野宏明支局長など、メディア関係者に現在進行形の大統領選挙と医療政策の関わりについて、聞き取り調査を行う事ができた。 また、2度目の調査では、再度アダム・シャインゲイト政治学部准教授に、また、メリーランド州の医療担当官のJinlene Chen氏に現在進行形の医療制度改革についての聞き取り調査を行った。また、日本テレビや東京新聞のワシントンD.C.特派員に対して大統領選挙の現地での報道のされ方についての聞き取り調査を行い、医療制度改革を巡る政治的な動きについての情報の収集を行うことができた。 本年は、東京財団のアメリカ大統領選挙分析プロジェクトメンバー、国際問題研究所の米国研究会「米国の対外政策に影響を与える国内的諸要因」の研究メンバーとして活動したが、ここでの議論や発表は、本研究を進める上で重要な役割を果たしている。
また、本研究の成果を生かし、下記2冊を上梓することができた。 「ポストオバマのアメリカ」山岸敬和、西川賢 (担当:共編者) 大学教育出版 2016年6月/「医療化するアメリカー身体管理の20世紀 ー」平体由美、小野直子 彩流社 2017年3月 ※pp185-pp214
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、4月~7月にかけて大統領選挙後のオバマ改革をめぐる議論を中心に、国内で資料調査と前年度までの資料の分析を行う。また、5月にはISA(The International Studies Association)にて、"Health Security in the 21st Century"分科会で座長及び発表者として参加する予定である。
8月~9月に再びアメリカ合衆国(ワシントンDC、メリーランド州、ヴァージニア州)において、トランプ政権下における医療保険取引所の運営状況についての調査、および資料調査の裏付けをするための調査、および資料収集(米国議会図書館、ジョンズ・ホプキンス大学図書館等)を行う予定である。
また、10月~3月にかけて、再度国外資料調査を行い、論文「(仮)オバマケアと2016年大統領選挙」を執筆したいと考えている。
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