研究実績の概要 |
患者保護および医療費負担適正化法(通称オバマケア、以下オバマ改革)が施行され始めた後の5年間で、どのような医療制度の変化がもたらされ、医療制度をめぐる政治過程がどのように変容してゆくのか、またオバマ改革がアメリカ市民に受け入れられていくのかを明らかにすることを目的とした。換言すれば、長期的な歴史的変化の中にオバマ改革を位置づけ、さらにそれがどのような制度的・政治的変化をもたらすのか、という問いに取り組むものである。政治学の理論的枠組 みに関する議論において、新たな政策が生み出す経路依存性(Pierson, Politics in Time, 2004などを参照)をめぐる議論について貢献を果たすことができると考えられる。アメリカ合衆国に皆保険制度をもたらすオバマ改革は、合衆国政治における最重要争点であり、アメリカ政治の流れを長期間に渡り大きく左右するものである。本法案の撤廃を目指すトランプ政権下のアメリカにおいて、特に「連邦政府及び州レベルの変化」という視点から、長期的な歴史的変化の中にオバマ改革を位置づけ、改革とその撤廃を目指す流れが今後及ぼす制度的、政治的変化への影響について研究を進めて行くものである。 本研究において最終年度となる2018年度は、資料調査についても引き続き、ジョンズ・ホプキンス大学図書館等に出向いて、特に地ランプ政権下で動いている政治下について行うとともに、比較現代政治研究会、政治史研究会において、本研究の理論的枠組みについての議論とともに、近年のオバマ改革の執行過程の変化などについて論じた。2018年度には学術論文「オバマケアの執行過程をめぐる政治的争いー世論の動向に注目してー」を執筆した。また出版は2019年5月になったが、『アメリカの政治』の中で第8章「社会福祉政策」を執筆し本研究に成果をまとめた。
|