研究課題/領域番号 |
26380194
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
風間 規男 同志社大学, 政策学部, 教授 (50257961)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 原子力ムラ / ガバナンスネットワーク / ダイバーシティ / 原子力政策 / 福島第一原子力発電所事故 |
研究実績の概要 |
昨年度中に論文執筆を終えていた「『原子力ムラ』研究序説」が6月に季刊『行政管理研究』に掲載された。ここでは、本研究課題である原子力政策をめぐるガバナンスネットワーク(原子力ムラ)を研究する際の分析枠組みを示した。その内容については、いくつかの研究会において報告して、研究者たちとの間で活発な意見交換を行った。 また、昨年5月に沖縄県那覇市で開催された日本行政学会総会における共通論題「政策をめぐる理論と行政学」において、「関係性の公共政策学と行政学ーガバナンスネットワーク論の動向を手がかりとして-」というタイトルで報告を行った。その報告においても、本研究課題である原子力政策をめぐるガバナンスネットワークの分析を意識した議論を展開した。 以上のような機会を通じて、分析枠組みの精緻化を図りながら、本年度は、研究実施計画にしたがい「原子力ムラ」の形成と展開に関わる文献・資料の収集、インタビュー調査を行った。1955年の原子力基本法をはじめとする「原子力三法」の制定をきっかけに形成された「原子力ムラ」がその後の原子力エネルギー開発の歴史において、どのように変化していったかを詳細に追うことで、福島第一原子力発電所の事故に至るまでの事実関係を整理しているところである。この成果の一部は、日本行政学会に設置された「災害と科学技術研究部会」のプロジェクトの報告書として公表されることになっている。 それ以外に、『ダイバーシティの行政学』に「ダイバーシティガバナンスとイノベーション」というタイトルの論文を寄稿し、『総合政策科学の現在』に「関係性の公共政策学と政策形成の現場」という論文を発表した。これらの論文も、本研究課題を進める際に得た着想をもとに完成させたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題に関して、ここ数年膨大な量の文献・資料が公表されている。次々と新しい事実が明らかになる中で、事実関係を整理するのに予想以上の時間がかかっている。原子力政策をめぐる国及び自治体の動きもめまぐるしく、その動向を追うだけでも膨大な作業量が必要とされている。 さらに、4月に熊本県を中心に大規模地震が発生し、多くの被災者が発生しており、日本の防災体制について新しい課題が浮かび上がってきている。原子力政策をめぐる大きな方針転換はないと思われるが、ガバナンスネットワーク論の理論構成を含めて、本研究課題の研究方針に若干の変更が迫られている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に向けて急ピッチで、これまで集めてきた膨大な情報の分析作業を行っているところである。「原子力ムラ」の形成から福島第一原子力発電所事故に至るまでのプロセスの分析については、一定の目処が立っているが、フクシマ以後の動向については、情報が錯綜していることもあって、研究成果としてまとめて公表するには、かなりの労力を要すると予測している。 今年度は、文献調査をより徹底し、必要に応じて関係者へのインタビューを重ねるとともに、ガバナンスネットワーク論の分析枠組みを活用し、膨大な情報を効率よく整理して、「原子力ムラ」のダイナミックな分析を行うことで、政治学の理論と原子力政策の現場の両方に貢献できる業績を残すことができたらと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、夏季休暇中に欧州において研究者との意見交換及びインタビュー調査を実施する予定であったが、近親者の介護の都合で調査に赴くことができなかった。 海外の研究者との交流については、先方が来日した際に意見交換を行う機会を設けたほか、メールでのやり取りを通じて、欧州などにおけるガバナンスネットワークの理論動向を追うことができている。関係機関へのインタビューについては、報告書等の資料でカバーできるかどうか検討中である。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、夏季休暇中において、オランダにおける大学訪問、ドイツ等における原子力関係機関に対するインタビュー調査等、フィールドワークの実施に向けて準備を進めているところである。また、これまでの課題研究を通じて収集した膨大な資料を整理するために、アルバイトを雇用することも考えている。
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