研究課題/領域番号 |
26380198
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研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
賀川 真理 阪南大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (10299018)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Department of State / Department of War / Crystal City / Sumnar Wells / John Emmerson |
研究実績の概要 |
2015年度には、本研究課題の前提である、なぜアメリカ合衆国がラテンアメリカ諸国から日系ラテンアメリカ人を本国に強制送還したのかについて、11月にアメリカ・ワシントンDCおよびメリーランド州のNational Archivesにおいて、主としてState DepartmentおよびWar Departmentの史料(Record Group 59およびPacific Warのファイル)を閲覧し、また当時のアメリカとラテンアメリカ諸国との国際関係を記した専門書を購入し、史料などを分析する際に参照した。国務省史料は想像以上に膨大で、その中から特にアメリカ政府高官の日系ラテンアメリカ人への対応と、強制送還された人々の大半が収容されたテキサス州クリスタル・シティにおける日系ラテンアメリカ人の収容生活に的を絞り、優先順位をつけて史料を閲覧したが、それでもなお閲覧を完了するには至らなかった。また収容者の生活については、プライバシーの観点から当該者でないと閲覧できない史料もあることがわかった。 入手できた史料によれば、アメリカはWWⅡ以前からラテンアメリカ各国で特異な行動を取る日系人について継続的に報告を上げ、必要に応じて注意を喚起しているほか、特に強制送還された日系ラテンアメリカ人の8割を占めた日系ペルー人については、INSによるAlien Enemy Detention Facility Filmの中で、「Peruvian Japaneseの多くは特別な問題があることがわかっている」と捉えており、国務省内のだれがどのような考えを基に強制送還の必要性を説いていたのかといった具体的な構図がこれらの史料により見えてきた。 今回閲覧並びに収集した重要な史料についてはデジカメで撮影し、2016年5月8日現在、年表や各国における要人同士の相関関係図を作成するとともに、史実を分析し続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5年計画の2年目を終わった段階で、アメリカにおける史料収集により、アメリカによる日系ラテンアメリカ人を強制送還するという政策の具体的な内容が把握できた。 ただし、本研究課題のもう一つの柱である、こうしたアメリカ政府による人権侵害の誤った行動に対するアメリカ政府に対する戦後補償交渉について、当初インタビューを予定していた収容者のうちの重要なお一人が亡くなられてしまったという事実を確認した。 今後両者を両立させながら研究を加速させていく必要性があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度に閲覧・収集した史料を基に今後も史実を固めて分析を進め、その第1回目の成果を、関係者の自伝や専門書の分析と合わせて、2016年9月における日本アメリカ史学会自由論題に於いて報告する予定で、その成果を2017年には同学会誌で行う予定である。 また2016年度には、日系ラテンアメリカ人への戦後補償交渉に加わったテキサス州のクリスタル・シティの収容者で、Campaign For Justice(のちのMochizuki訴訟)の代表であるCarmen Mochizukiさん、Hector Watanabeさん、そして日系アメリカ人ではあるが父親の強制収容が解かれなかったために、クリスタル・シティでの収容生活を送ることになったYaeさんにロサンジェルスでお会いし、インタビューをお願いする約束をしている。また遅くとも来年までに、アメリカとペルーの公文書館における史料収集および関係者へのインタビューを終え、最終年度にはその成果を学会誌の査読論文に投稿したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度及び2年目においては、一身上の都合により長期間海外に行くことが難しかったため、2016年度以降に史料収集およびインタビューの機会を持ち越すことになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度の6-9月の間にMochizuki訴訟の代表者をはじめ、クリスタルシティで収容生活を送った2人の日系人にロサンジェルスでインタビューをするほか、本年度もしくは来年度にはペルーと再度ワシントンDCの公文書館に行き、関係史料を閲覧したいと考えている。
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