本研究は、公益法人の政治活動規制の規範の探求を目的としている。本年度まで持続的に以下の三点について研究を進めた。第一に、日本NPO学会等において、諸外国での規範の状態に関して積極的に学会報告やセッション形成を行い、関連の研究者と交流しつつ知見を深めてきた。第二に、公益認定制度の実態と問題点の把握を行ってきた。さらに、第三に、時事的に関連する問題、特に公益法人制度と比較対象として重要な特定非営利活動法人制度も含めて、生起する諸問題に対して積極的に実態把握に努め、適宜その成果を発表してきた。 主たる知見としては、昨年度までの研究成果を深める形で、政治活動の概念における、選挙活動とそれ以外の活動を類型化し、特に英米法諸国における非営利公益団体に対する規制内容を把握した。具体的には、一般的には選挙活動に対して厳しい規制がなされている。しかし、それ以外のアドボカシー、ロビーイングについては一定の規制をしつつも緩やかに執行されているということができる。日本では、法人類型によって、この規制に大きな差異が存在しているが、その正当性の検討は十分ではない。本年度は、この点について、参考となるアメリカ合衆国、及びニュージーランドでの状況を注視しつつ検討を行い、政治活動規制における現状把握を行った。アメリカでの宗教団体規制との関係は、今後日本でも非常に重要な論点になると思われる。 なお、当初計画にあった全国の公益認定等委員会(都道府県の場合には正式には合議制機関)及び行政庁調査は、2017年9月から大阪府の同委員会の委員長に就任したことから、業務との関係で、知見が深まっていることと職務上の守秘義務との関係で調査について慎重な取り扱いが必要になり、この任期が2019年度半ばであることからその時期に行うこととした。この点で、研究課題について補うために、海外との比較研究と実態把握に力を注ぐことにした。
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