研究課題/領域番号 |
26380200
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
松本 充豊 天理大学, 国際学部, 教授 (00335415)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 台湾 / 半大統領制 / 議会制度 / 党団 / 党団協商制度 / 会派協議制度 / 議長 / 立法院長 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、台湾の半大統領制における政策決定を実証的・理論的に分析し、大統領にあたる総統のリーダーシップのあり方を考察することにある。本年度は、第1に、議会制度および半大統領制における政策決定についての研究に関する文献調査を行った。アメリカ下院、フランス国民議会に関する研究成果の吸収に努めたが、理論研究の動向把握も含めて台湾の議会制度の実証分析に向けてある程度の準備が整った。第2に、台湾の立法院の議会制度について調査した。台湾では1990年代初頭に国会全面改選が実現し、以後民主化が漸進的に進展したが、現行の議会制度を理解する上で重要なのは、国会(立法院)の議事能力の向上を目指した1999年の国会改革(「国会改革五法」の制定・施行)である。この改革では、立法院内の委員会の専門化が図られた一方で、「党団」と呼ばれる院内会派制度とそれによる協議制度(「党団協商制度」)が導入された。少数意見の尊重と議事の効率化を目指した会派協議制度の導入は一定の成果をもたらしたものの、その一方で委員会制度を骨抜きにし、法案の審議やその行方が協議に参加できる少数者に左右されるという結果を招いた。さらに、同制度の存在が立法院における議長(立法院長)の影響力を大きく高めることにもつながった。議案を会派協議に委ねるかを判断し、会派協議を主宰する権限をもつ立法院長が、法案通過の鍵を握ることになったためである。国会改革以来、この立法院長を務めたのは現職の王金平ただ一人である。民主化後の台湾における大統領と議会の関係は、まずもって「弱い」大統領(総統)と「強い」議会(立法院)と評することができるが、より現実的にはこれに王金平の属人的要因が加わって、「弱い」大統領と「強い」議長ともいえる局面が続いてきたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
議会制度や半大統領制における政策決定に関する文献調査に多少の遅れがみられることを除き、全般的な研究の進捗状況は順調であるため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度には、前年度の調査内容に関する総括を踏まえて、第1に、李登輝政権期および陳水扁政権期を対象に、立法院での議案の審議・採決状況の実態を明らかにする。第2に、それをもとに議会制度が議会運営における主導権争いをどの程度規定したのかを実証的に分析し、そうした争いが大統領(総統)のリーダーシップをいかに左右したのかを考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の変更に伴う諸事情により、春期休暇中に本来予定していた国内出張(資料調査委)の実施が時間的に困難となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
延期していた出張計画を次年度の早々(4月中)に実施して、当初本年度中に予定していた資料収集を完了させ、速やかに次年度の研究計画の遂行にあたる。
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