研究課題/領域番号 |
26380201
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
遠藤 泰弘 松山大学, 法学部, 教授 (30374177)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ドイツ政治思想史 / 主権 / ワイマール憲法 / フーゴー・プロイス / 大統領制 / 自由主義 / 民主主義 / ドイツ公法史 |
研究実績の概要 |
本年度は、フーゴー・プロイス(1860-1925)の重層的な政治秩序構想の分析を行った。プロイスの師であるオットー・ギールケ(1841-1921)が、国家の概念規定に主権概念を導入したために、水平的な仲間団体論(ゲノッセンシャフト理論)の貫徹が阻まれる結果となったのに対して、プロイスは「領域高権」という概念を利用して国家と自治体の原理的区別に成功し、論理的にほぼ完璧に近い形でゲノッセンシャフト理論を貫徹することに成功したことを究明した。 その上で、ワイマール憲法の起草者であるプロイスの憲法草案について、その直接公選大統領制構想に焦点をしぼり、憲法制定過程におけるプロイスの役割を究明しようと試みた。つまり、プロイスの大統領制構想は、プロイスがドイツ革命以前に構想していたビスマルク憲法改正草案におけるライヒ機関としての皇帝という構想にその淵源を辿ることができ、紆余曲折を経たワイマール憲法の制定過程においても、例外的にプロイスの当初の構想がほぼそのままの形で維持された部分であったこと、そして、行政府の権限と立法部の権限の不均衡という問題も、もともとのプロイスの構想に存在していたことを究明した。 以上の研究成果は、『政治思想研究』における査読付論文の形で公刊するとともに、戦時法研究会(上智大学)における研究報告という形で公表した。なお、上記査読付論文は、政治思想学会研究奨励賞を受賞した。その他、書評論文1本、海外における研究報告1本、国内における招待講演2本という形で、研究成果の社会還元に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文の公刊や国内外における研究会や講演会における発表という形で、研究成果の公表に努めると共に、2014年9月には約3週間の日程で、ドイツ・フランクフルトのマックス・プランク研究所における在外研究に従事し、ミヒャエル・シュトライス教授をはじめとする研究所メンバーと意見交換を行った他、必要な資料の収集も順調に進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度に収集した資料の分析を進め、直接公選大統領制の他、ライヒ再編構想や大統領の国家緊急権(ワイマール憲法48条)といった他の重要論点についても、ワイマール憲法制定過程におけるプロイスの役割を究明し、論文や研究報告という形で研究成果の社会還元に努めていきたい。
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