研究課題/領域番号 |
26380205
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
福富 満久 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (90636557)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 覇権安定論 / 地政学 / 米中関係 / Gゼロ / 勢力均衡 / 国際秩序 / 東西冷戦 / 安全保障 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、冷戦期と以降の米国の資源・エネルギー戦略の変遷を検討し、米国が如何なる戦略で石油エネルギーを確保し、国際政治を動かしてきたのかを明らかにすることであった。特に中東諸国と米国はどのように安全保障体制を築いてきたのか。冷戦以降、戦略に変化はみられるのか。シェールガス革命によって、自前のエネルギー確保が可能となった米国の地位は揺るぎないものとなり、国際政治は安定するのか(覇権安定論)。あるいは、超大国の無関心が進み、地域は不安定化するのか。これまで行ってきた研究では、米国は、ソ連崩壊後、一極覇権体制の構築を多国間主義の中で模索してきたものの、米国が目指す外交としての「覇権(hegemony)」と世界戦略としての「多国間主義(multilateralism」という一見すると矛盾する秩序構想を模索してきたものの、近年は中国を国際秩序の重要なアクターとして見据え、対話を重ねていることがわかった。最終的には、冷戦時代のように東西陣営の盟主であった米国とソ連が、陣営内の秩序を維持する強い意思と力を持つ一方で均衡化の責任を他国に転嫁できない立場になったことで責任転嫁問題がうまく管理され、勢力均衡が安定的に作用したように、米国と中国による2極構造に加えてEUが第3極となって米国と中国の調整役となることが世界秩序の安定に寄与すると考える。これらの研究実績を『Gゼロ時代のエネルギー地政学―シェール革命と米国の新秩序構想』(岩波書店、2015年1月22日刊)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の予定では、米ソ対立が決定的となった直後から、米国はエネルギー資源を確保するためにどのように動いたのか、特に湾岸産油国との関係構築等を中心にその内容把握に努める計画を立て、米国ワシントンにある連邦議会図書館や資源エネルギー庁、またエネルギー政策研究でリードするハーバード大学国際問題研究センター、同大学のケネディ公共政策研究ベルファーセンターなどへ訪問して綿密に調査するという予定であった。しかしながら、平成27年度8月からの米国での在外研究にて実行することにしたため、その点に関しては実行できなかった。とはいえ主要な文献・第一次資料を収集し、米国がイランやイラクに介入へ動いた背景、政策担当者、大統領の指揮について知識を蓄えていきたいという目標については、成果を『Gゼロ時代のエネルギー地政学―シェール革命と米国の新秩序構想』(岩波書店、2015年1月22日刊)にて発表することができたことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、世界のエネルギー安全保障の鍵を握ってきた中東の相対的な地位低下は、国際政治に何をもたらすのかについてさらに詳しく研究していきたい。もっぱら宗教やイデオロギー関係を中心に議論がなされてきた米国の外交史と国際関係史において、米国のエネルギー獲得戦略と産油国および産油国のある地域の内戦・軍事介入の相関関係についての研究はこれまでほとんどみられない。そのため中東以外の地域、例えば南米での軍事介入等まで視野を広げて、米国の冷徹な資源・エネルギー戦略を研究することで新しい分析視角を提示することができるようにさらに考察を深めていきたい。 平成28年度は、平成26年度、平成27年度の研究成果をふまえ、これまで米国がエネルギーを巡ってどのような戦略で動いてきたのか、冷戦期、冷戦終結後、そして新エネルギー時代の各時代に焦点を合わせてもう一度検討し、今後どのような世界秩序が構築されていくのか、さらに具体的に考察してきいきたい。特にエネルギー大国ロシアや、米国とのG2体制を目論む中国を、米国はどのように制御しようとしているのか。そして日本はどのようなエネルギー安全保障を構築していくべきかについて検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年8月~2016年3月末まで米国カリフォルニア大サンタ・バーバラ校で在外研究をする予定で研究・調査のスケジュールを組み立てたことをふまえ、出張することになっていたが、学内の授業その他を優先し、使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年8月~2016年3月末まで米国カリフォルニア大サンタ・バーバラ校で在外研究をすることになっており、そこで研究・調査および資料収集・学会参加のために使用する。また、あわせて米国ワシントンにある連邦議会図書館や資源エネルギー庁に赴き、実際の米国のエネルギー政策の変化と状況について綿密に調査する。また、米国のエネルギー政策研究でリードするハーバード大学国際問題研究センター、同大学のケネディ公共政策研究ベルファーセンター(The Belfer Center for Science and International Affairs)に赴き、資料収集や研究者との交流を図り、エネルギー分野の専門家に直接的な聞き取り調査を行う予定である。
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