研究課題/領域番号 |
26380205
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
福富 満久 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (90636557)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 冷戦 / エネルギー戦略 / 中東 / シェール革命 |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究を踏まえ、平成27年度は、冷戦終結後の米国のエネルギー戦略について研究を続けた。2015年8月~2016年3月末まで米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校にて在外研究を行った。これまで米国の資源エネルギー確保政策が、国際政治においてどのような影響を与えてきたのか、必ずしも明らかにされていなかった。ソ連との軍拡競争や反共政策としての介入政策に関する議論はあっても、エネルギー確保に焦点を絞って国際関係を論じた研究は少なかった。そこで中東における米国のエネルギー政策の実践と軍事協力や軍事介入について研究を進めた。具体的な戦略や、和平プロセス等については、冷戦初期、ソ連とのイデオロギー対立のなか、自由主義経済の発展に力を入れてきた米国は、その成長の核となる資源・エネルギーの確保を何よりも優先しなければならなかったことがわかった。それは、自由主義を広めるためには、米国自身が超大国として繁栄しなければならなかったという理由もある。 2014年実績で米国は石油の輸入をカナダ(36.7%)、メキシコ(9.1%)、ヴェネズエラ(8.5%)など8割を中東以外から調達し、残りの2割を湾岸から輸入しているが、そのうち半分以上をサウジアラビアから輸入している(2015年EIA統計)。万一、中東からの原油供給が止まっても他地域からの原油の確保はできる状態にある。本研究では、グローバル化する地球社会において、シェールガス革命に湧く米国が今後世界の安全保障政策にどのように関わっていくのか、という点についても調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米国の政策実践について中東や南米に赴き実態観察や資料収集を行うとともに、欧州や日本を含む資源エネルギー関連会社に協力を要請し、米国のエネルギー政策と介入について新しい研究経路を探ることも目標としていたが、その点について実施できなかったが、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校にて在外研究でき、中東における米国のエネルギー政策の実践と軍事協力や軍事介入について研究を進めることができたこと、また、和平プロセス等についての資料収集を行うことができたこと、中東における米国系石油企業の実践の可能性を探るため、研究者や国際援助機関やNGO、政策担当者、と意見交換を行うことができたことから概ね順調に研究を進めることができたと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、2000年以降、動向が注目され、近年騒がれているシェールガス革命を中心に米国の安全保障政策の変化と今後の展望について調査したい。シェール革命の恩恵を受け、経済的にも強い米国が戻りつつある。おそらく今後、米国は、軍事力に依拠した強制力(ハードパワー)と技術力に依拠した経済力や文化に依拠したソフトパワーを組み合わせたスマートパワー戦略を駆使して、国際政治において一定の影響力を確保し続けるのではないかと考える。そのあたりについてさらに研究を進めていく。 また欧州の新エネルギー政策(太陽光等)について調査・研究し、米国とは一線を画するエネルギー政策の構築実践について調査し、日本のエネルギー政策の今後について提言できるようにする。 なお、研究成果を国内外のシンポジウムで発表し、特別講義やマスメディアなどを利用し、学生のみならず社会一般に還元していく。最終的には成果を書籍として出版する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年8月より米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校にて在外研究を行った。その滞在経費などのため、前倒しで助成費支給を申請したが、最終的にすべて使用できなかったため繰り越しした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(平成28年度)は、2000年以降、動向が注目され、近年騒がれているシェールガス革命を中心に米国の安全保障政策の変化と今後の展望について調査する。また欧州の新エネルギー政策(太陽光等)について調査・研究し、米国とは一線を画するエネルギー政策の構築実践について調査し、日本のエネルギー政策の今後について提言できるようにする。よってこれらの調査を行うための旅費、滞在経費に使用する。
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