研究実績の概要 |
2018年度は、北京とバンコクで聞き取り調査を行い、前年度と同様に研究成果を論文としてまとめる作業を行った。両都市では、政府関係者と有識者に対して、当該国の地域秩序観、地域制度(ASEAN, ARF, EAS)におけるルール形成、その他南シナ海問題に関する政策について聞き取り調査を行った。論文作成においては、事例に対する分析枠組みの説明力を向上させるため、分析枠組みの対象に規範の「制度化」段階だけでなく、「実行段階」における関連アクター間のインタラクションを入れることを試みた。2018年度の研究実績は主に以下のとおりである。 ①International Studies Association(ISA)の年次大会での論文発表:この論文では、東アジアの地域制度に制度化された協調的安全保障という規範が実行される段階で起こるアクター間のインタラクションを、特に規範の実行に後ろ向きなアクターがとるアプローチに焦点をあて考察し、そのインタラクションの結果、当該規範の意味内容がどのように変化したのかを解明した。この論文では、国際制度に制度化された規範が、政策として実行される過程およびその過程で起こり得る規範変容のメカニズムのモデルを試案として構築した。 ②国際学術誌『The Pacific Review』における論文掲載:東アジアの地域制度(ルール形成の枠組み)に対する日本の政策アプローチを冷戦終結以後から時系列的に考察し、各時系列において、そのアプローチがどのような外的・内的要因によって誘発されたのかを国際関係理論を用いて明らかにした。
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