2016年度は、年があらたまった2017年1月23日から2月3日、3月5日から3月20日の2回にわたって渡米し、アメリカ国立第2公文書館とカリフォルニア大学ロサンゼルス校のチャールズ・E・ヤング・スペシャルコレクション図書館でアメリカのソフト・パワー政策とメディア企業についての資料収集を行った。アメリカ第2公文書館では、USIA(アメリカ情報局)文書から、アメリカのメディア、娯楽、スポーツ、広告などの産業界との連絡調整にあたっていた民間協力課(Office of Private Cooperation)とその課長、アボット・ウォッシュバーンについての文書を見つけた。これによって以下のことがわかった。1)とくにアイゼンハワー政権下のPeople to Peopleプロジェクトは、政府も資金を出すが、民間も寄付を集めてそれを活動に充てるという民間活力利用、官民協力の、今日の目から見ても先進的プロジェクトだったが、政府のための広報活動を企業自らが集めた寄付金で行うのは、少し虫が良すぎるものだった。このため資金が十分集まらず、活動は低調だった。2)この官民協力はその後もうまくいかず1967年同課は廃止され、その機能をUSIAの他の部局に移すことになった。やはり、産業界は政府が多額の予算を投入して、企業にとってもメリットがあることがわからないと、協力しないのである。 ロサンゼルスのカリフォルニア大学ロサンゼルス校のスペシャル・コレクションでは、USIAとハリウッド映画産業との協力関係を調査したが、戦争中の政府との協力関係を示すものはでてくるものの、戦後に関しては見つけられなかった。ハリウッド映画は世界展開しているので、政府と関係があることがわかると、プロパガンダを疑われて、マイナスになるので、文書はあるが公開はしていないのかもしれない。
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