研究課題/領域番号 |
26380220
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研究機関 | 恵泉女学園大学 |
研究代表者 |
李 泳采 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 准教授 (30460108)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 北朝鮮 / 在日朝鮮人 / 帰国運動 / 移動の自由 / 冷戦 / 強制連行 / 軍人軍属 / 朝鮮族 |
研究実績の概要 |
この研究は、1950年代半ばから80年代半ばまでに行われていた「在日朝鮮人帰国運動」(約10万名の在日朝鮮人が25年間にかけて北朝鮮へ集団的に永久帰国した)に関わった朝鮮総連や北朝鮮の役割を中心に、在日朝鮮人帰国運動の目的とその実態を明らかにすることを目指すものである。特に、同時期に北朝鮮当局により展開されていた中国延辺地域とソ連サハリン地域における集団帰国運動を詳細に検討することで、「政治的な民族動員運動としての在日朝鮮人帰国運動」の全体像を描き出そうと努めるものである。 1年目の2014年には、中国朝鮮族が多く住む延辺自治州を中心に北朝鮮への帰国運動の実態を調べる。中国朝鮮族の間では1960年前後、中国の大躍進時代に北朝鮮に帰国して働いてから再び中国に戻った人々が存在している。その人々へのインタビューや当時の新聞や文学記録を中心に、その実態を調べることを目的としている。 1年目には中国延辺地域を1回訪問し、延辺大学や朝鮮族の自治州で朝鮮族と北朝鮮関係を調査し、関連書籍を集めた。また韓国や日本で北朝鮮から脱北した人々をインタビューして、北朝鮮の中における在日朝鮮人帰国者の生活に関する証言を獲得することができた。 在日朝鮮人の北朝鮮への帰国運動は、冷戦時期移動の自由がなく、また公開的な情報提供がなかった時代に人々が偏った一方的な情報を信じて帰国か残留かを決めなければならない構造は、日本植民地時代に強制連行された朝鮮人の運命と似ている基本構造もある。1年目は、その問題意識で日本植民地時代に軍人や労働者として強制連行されていたインドネシア地域や韓国の農村などを調べながら、移動における自由の制限の問題を深く考えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目には、中国朝鮮族の地域を主に研究する予定であったが、業務上の理由で1回しか訪問できず、当事者へのインタビューよりは、関連書籍や脱北者調査による間接研究になってしまった。 その代わりに強制連行や冷戦時期の移動の自由が制限されていた事例を幅広くみることで強制移動の基本構造と比較研究することができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年は人の強制移動の側面で、インドネシアや日本など東アジア地域の資料や事例からみることに集中した。今年は、70年代にドイツに看護師や鉱夫として派遣された韓国人の事例を中心に在日朝鮮人帰国運動当時の南北の人の移動を比較する。そして、アメリカが在日朝鮮人帰国運動にどうかかわったのかを調査するために、アメリカの国立文書館(NARA)を訪問する予定である。また延辺でも現地調査を行い、当事者へのアプローチをもっと積極的に行う予定である。
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